ドナルド・トランプ前米政権の国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が「ウクライナの戦争は、なぜ世界が米国の『エネルギー・ドミナンス(優勢)』を必要とするのかを明らかにした」という論説を発表した。これは米国共和党の考えをよく要約している。
《バイデン米政権は、米国の石油、天然ガス、石炭、原子力を敵視してきた。これがなければ、米国も欧州も戦略的にはるかに有利な立場にあり、プーチンのウクライナでの戦争を抑止できた》《欧州はロシアのエネルギー供給に依存して脆弱(ぜいじゃく)性をつくり出してきた。だが、本来は、そのエネルギーは米国が供給すべきものだったのだ》
《われわれは、米国のエネルギーの力を解き放たねばならない。天然ガスやクリーンコールなどのクリーンエネルギーを、欧州やインド太平洋地域の同盟国に輸出する努力を倍加させねばならない》《われわれ共和党は秋の中間選挙で大勝し、民主党の環境に固執したエネルギー政策を覆し、米国のエネルギー・ドミナンスを取り戻す》
何と力強い言であろうか。
これから秋の中間選挙、そして次の大統領選挙を経て、米国共和党が世界を変えてゆく可能性はかなり高い。日本は、そのときの対米関係まで予想して、バイデン政権下での「再エネ・EV一本やりの空想的なグリーンエネルギー政策」とは距離を置くべきだ。
具体的にはどうするか。
日本は資源に乏しいので単独ではエネルギー・ドミナンスを達成することはできない。だが、米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。
いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
ウクライナ戦争後のエネルギー危機を受けて、中国は年間3億トンの石炭生産能力を増強することを決定した。これだけで日本の年間石炭消費量の2倍近くだ。また中国は25年に原発の発電能力を7000万キロワットまで増やす計画で、30年には1億2000万キロワットから1億5000万キロワットを視野に建設認可を進めている。これはフランスと米国を追い抜く規模である。
安価で安定した電力供給を中国が確立する一方で、「脱炭素」で高コスト化し脆弱(ぜいじゃく)な電力しか日米になければ、われわれは戦えるだろうか?