<主なポイント>
〇22年2Qの実質GDP成長率は、前年比+0.4%と、前期(同+4.8%)に比べ伸び率が急落し4期連続で5%割れ。年間成長率目標5.5%の達成はほぼ不可能な見通し。
〇2Qの主な下押し要因は3月末から5月末まで続いた上海市のロックダウン。中国経済の中核都市の物流・人流停止が、輸出入、生産、投資、消費等に深刻な影響を与えた。とくに交通運輸、飲食、旅行等のサービス関連消費への影響が大きかった。それに加えて不動産市場の停滞が不動産開発投資や住宅関連消費を下押し。
〇ゼロコロナ政策の継続、不動産市場停滞長期化、出生率の低下・人口減少、若年層の失業増大、米中摩擦、先進国経済の停滞等の要因を背景に、中国経済の将来に対する不透明感が強まり、企業経営者の投資姿勢や消費者の購買意欲が衰え始めているのではないかとの指摘がある。
〇輸出は前年比+13.1%増と引き続き堅調な伸びを持続しているように見えるが、伸びの主因は輸出価格の上昇であり、輸出数量は同+1.4%と低い伸びにとどまった。これは昨年まで続いていた生産代替による押し上げ要因が剥落したことによるもの。
〇投資は、製造業投資の伸びが低下した一方、インフラ建設投資は政府の景気下支え政策方針を背景に堅調を持続。不動産開発投資は依然厳しい停滞が続いている。
〇7月中旬、李克強総理が成長率確保のために過度な刺激策は実施しない旨発言したほか、7月末の政治局会議でも経済政策運営上の目新しい刺激策は示されなかった。
〇消費は4月をボトムに回復傾向にあるが、新型コロナ感染再拡大リスク、若年層の失業増大、中長期的な経済の先行きに対する不安の高まりなどを背景に消費を抑制して貯蓄を増やす傾向がみられている。
〇ゼロコロナ政策に関する政府の対応に対して大多数の上海人が強い不信感を抱いた。30~40代の若い世代はこれまでの人生において自由を奪われた経験がないため、今回の衝撃が大きく、中国の将来が見えなくなったという印象を持った人が多い。
〇中国経済の先行きの不透明性が高まっている状況下、当面の対中投資の拡大に対して慎重になっている日本企業が増えている。しかし、実際に責任者に聞いてみると、中長期の対中投資戦略の全体方針に変更はないと答える企業が多い。日本企業の対中投資姿勢はますます二極化が顕著となっていくと予想されている。