最近出たお勧めの本です。
著者のマイケル・シェレンバーガーは初めは環境運動家だったが、やがてその欺瞞に気づき、いまでは最も環境に優しいエネルギーとして原子力を熱心に推進している。
地球温暖化に関しては小生とほぼ意見は同じだ。CO2は増えていて気温は緩やかに上昇した。だが経済成長のお陰で自然災害による被害は激減した。気候危機というほどの兆候などない。急進的な温暖化対策の悪影響の方がよほど大きい。再生可能エネルギーはコストが高く、不安定で、広い面積を使うなど環境にも優しいとはいえない。
さらにこの本の面白いところは、シェレンバーガー自身がコンゴやブラジルに行き、貧しい人々と共に暮らしたことだ。そこで、先進国の環境運動の押し付けによって、いかに経済開発の芽が奪われ、また環境がかえって悪化しているかを体験に基づいて書いている。
コンゴでは、水力発電の建設が阻止され、エネルギー不足の中、人々の薪炭利用が続いた。炭が焼かれ、都市に出荷される。これによってゴリラの生息域が失われ、時に人々とトラブルを起こして射殺される。ブラジルでは、セラードと呼ばれる生産性の高い土地での大豆生産が制限され森林保全を強要される。この代わりに生産性の低いアマゾンの森林地帯が開墾されて、かえって森林が多く失われる。
シェレンバーガーは技術進歩が環境保全に果たした役割を強調している。プラスチックによって象牙、亀の甲羅、クジラのヒゲなどの天然起源の材料が代替されたことは動物保護のために決定的に重要だった。人工的だから環境に悪いなどという思い込みは間違っている。
経済成長によって繁栄し、技術進歩の恩恵を受けることで、災害にも強く、また環境とも調和して生きて行けるようになる。これから豊かになりたいという貧しい人々を否定するような環境運動ではなく、「環境ヒューマニズム」が必要だと著者は説く。