〇米中関係は本年入り後引き続き悪化傾向。その主な要因は、ロシア-ウクライナ戦争をめぐる中国とロシアの接近、および中国国内のゼロコロナ政策の継続である。
〇米中両国は相手国に対する批判を繰り返すばかりで、米中対立改善に向けての努力は見られていない。その背景には、米国は11月の中間選挙、中国は秋に第20回党大会を控え、両国とも国内政治を重視する傾向が強まっていることが影響している。とくに米国の政策運営は中間選挙対策優先で場当たり的となっていると批判されている。
〇米国では人工妊娠中絶、銃保有等多くの問題において党派対立の視点から相手を攻撃する風潮が社会全体に蔓延。内政外交上の重要課題に関して冷静な判断を下すことが難しい状況にあり、多くの有識者が「米国が壊れている」と受け止めている。
〇以上の状況を背景に、内戦が生じることを懸念する米国民の比率が44%に達した。
〇バイデン政権の支持率も本年初来40~42%と低迷が続き、2024年の大統領再選に対して悲観的な見方が多くなっている。
〇米国議会ではデカップリングを実現するための「対中競争法」案の審議が進んでいるが、欧州ではこうした中国との経済交流に対する制限を強化する動きは見られていない。
〇ウクライナ侵攻を巡って米国と欧州の間の団結が強まった。しかし、欧州の専門家の間では、米国と欧州の間には一定の温度差が存在するとの指摘も多い。
〇欧米間では中国やロシアに対する認識の違いが解消されていないほか、トランプ政権時代に生じた欧州諸国の対米不信も払拭されていない。このため、2024年の大統領選挙の結果次第で、再び米欧の間の溝が深まるリスクは残っている。
〇米欧の専門家は日独仏等日欧主要国が中心となってミドルパワー諸国が連携を強化し、米中両国に対して対立を鎮静化するよう働きかける意義が大きいと考えている。ただし、実際には米国を説得するのは難しいとの見方が一般的である。
〇ドイツ企業の一部に中国離れの動きが見られているが、その主な理由は中国国内市場での競争が以前に比べて厳しくなり採算が悪化していることによるもの。国際競争力の高い一流企業は対中積極方針に変化はないと見られている。
〇「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)は貿易自由化が交渉の対象外とされているため、参加国にとって経済的なメリットは乏しく、地政学的にシンボリックな存在であると評価されている。実態については「中身が空っぽempty」、「ないよりまし」といった厳しい評価が大半である。