監訳 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 訳 木村史子
本稿は、State of Polar Bear 2021を、The Global Warming Policy Foundation(GWPF)の許可を得て翻訳したものである。
要 約
- 最近の調査結果から、世界のホッキョクグマの個体数は少なくとも3万2,000頭であることが示されているが、この推定値には潜在的な誤差の幅がある。
- 2017-2018年のデイビス海峡の個体群の調査結果では、数は約2,015頭(範囲1,603-2,588頭)で安定しているが、クマは2005-2007年に比べて太っており、子クマの生存率は良好であることが示された。
- 2016年に行われたチュクチ海の航空調査により、推定個体数 5,444頭(範囲3,636~8,152頭)となり、前回の調査より約2,500頭増加した。この海域はホッキョクグマにとって素晴らしい環境であることを反映していると思われる。
- ホッキョクグマがアラスカからロシアへ大量に移動しているようだという報告は、北極圏全体の一次生産性の継続的な上昇によって、チュクチ海のクマにとってアラスカよりもロシアが優れた摂餌条件を持つことを示しているのかもしれない。
- 2021年にノルウェーのスヴァールバルで行われた春の調査では、雄のホッキョクグマの体の状態は安定しており、家族集団の出産仔数は1994年と同じであるが、2019年よりも低いことが示された。
- 新しい論文で、スヴァールバルのホッキョクグマは1970年代よりも夏の間にトナカイを殺して食べているようだが、その現象は海氷の減少だけと結びついているわけではないことが報告された。
- カナダの著名なホッキョクグマ生物学者であるマーカス・ダイクは、ヌナブト州政府のためにランカスター・サウンド個体群の調査を行っていたところ、レゾリュート・ベイ付近で2名の乗員とともにヘリコプターの墜落事故により2021年4月25日に悲劇的な死を遂げた。
- 2021年には、8月にフォクシー・ベイスン(カナダ)、3月にスヴァールバル(ノルウェー)、8月にグリーンランド北東部で、ホッキョクグマによる人間への深刻な攻撃が3件発生した。死者は出ていない。
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ホッキョクグマの現状 2021(PDF)
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