東京都が、住宅を含む新築建築物に太陽光発電パネルの設置を義務付ける条例改正案制定を検討している。キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は、夕刊フジに先週掲載した短期連載「エネルギー大問題」で、「国民負担」や「中国新疆ウイグル自治区の人権侵害」などの懸念について指摘し、大きな反響を呼んだ。さらに、「水害時の感電の危険」について緊急寄稿した。
太陽光パネルがあると、火災の際、感電の危険があることは割と知られるようになった。
消防庁の資料「太陽光発電システムの設置された一般住宅における消防活動上の留意点」を見ると、太陽光パネルは外部から発電を遮断できないことから、消火時に感電する可能性がある、としている。パターンはいくつかあるが、消火時の放水を伝って感電することもある。
消防の放水が問題になるぐらいだから、水害の場合にも、もちろん感電の危険がある。
これには国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資料「太陽光発電システムの水害時の感電の危険性について」の説明があり、水没・浸水した太陽光発電システムに接近や接触すると「感電のおそれあり」としている。
普通の電気であれば、水害の時には送電線のスイッチを切れば感電の心配はなくなるが、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けるのだ。
従って、水害が起きやすい場所では、太陽光パネルの設置には気を付けねばならない。東京都で特に心配なのは江戸川区だ。
江戸川区資料「江戸川区水害ハザードマップ」では、最悪の場合、最大で10メートル以上の浸水が1~2週間続くと警告されている。この資料は「ここにいてはダメです」という衝撃的なメッセージで話題を呼んだ。
さて、大規模な水害が起きたときに、太陽光パネルは感電で二次災害を起こさないのだろうか?
それによって救助や復旧が困難になることはないのだろうか?
前述のNEDOの資料には、「水害にあった太陽光発電システムにむやみに近づかず事業者や管理者に連絡してください」とある。だが、いざ浸水というときに無数の太陽光パネルに囲まれていれば、そんなことでは間に合いそうにない。
問題はもちろん江戸川区だけに止まらない。洪水が起きかねない場所は東京都の至る所にある。太陽光パネル導入を急ぐ前に、まずは安全性の確認が必要なのではないか。
この問題については、6月24日までの期限で都が意見募集している。