メディア掲載 グローバルエコノミー 2022.06.22
Le Mondeに掲載(2022年6月3日)
この記事はアジア経済に関する月1回のコラムシリーズの1本として、2022年6月3日付けの仏ル・モンド紙に当初掲載されたものである。原文は以下のURLからアクセスできる:(翻訳:村松恭平) https://www.lemonde.fr/economie/article/2022/06/03/en-coree-du-sud-faire-des-quinquagenaires-la-generation-numerique-pour-les-maintenir-au-travail-dans-de-bonnes-conditions_6128867_3234.html
セバスチャン・ルシュヴァリエはル・モンド紙のコラムの中で、高齢化している労働者たちの生産性の条件となるデジタルテクノロジーを彼らに身に付けさせる必要性を強調している。
韓国は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も急速な労働力人口の高齢化に直面している。労働力人口(15〜64歳)に占める50〜64歳の人々の割合は、1990年には16%だったのに対し、2019年には3分の1を占めていた。そしてその割合は今後も増加する見込みだ。
ある一定の年齢——職種によって異なるが、一般的に40歳代——から年齢は個々人の生産性にマイナスの影響を及ぼすと多くの研究が指摘する中、高齢化は労働生産性の急速な低下と、50歳以上の人々の低いエンプロイアビリティ[雇用され得る能力]に関わる主要な社会問題の出現について不安をもたらしている。
したがって焦点は、この段階では退職年齢の引き上げよりも、50歳以上の人々のエンプロイアビリティを維持するために、そして彼らの間で貧しい労働者が増加しないように、彼らの知識は廃れておらず今もなお生産性が高いと確信し、良い条件のもとで仕事を続けてもらうことだ("Can older workers stay productive? The role of ICT skills and training", Jong-Wha Lee, Do Won Kwak and Eunbi Song, Journal of Asian Economics, April 2022)。
韓国の経済構造がデジタル化の影響のもとで急速に変化しているだけに、一層この問題は切迫している。情報通信技術(ICT)スキルの世代間格差は、高齢労働者の相対的生産性をさらに低下させ得る。
そうした理由から、この3人の韓国の経済学者は労働生産性に対する年齢の影響だけでなく、ICTスキルとこの分野におけるトレーニングプログラムへの参加が労働生産性に及ぼす影響の評価にも取り組んだ。
この趣旨での彼らの主な貢献は、いくつかの技術環境において諸問題を解決する能力だけでなく、これらのスキルを仕事で効果的に活用すること——それは企業の組織化と関係している——もまた考慮に入れたICTスキルの指標を構築したことだ。
この研究の結果は、個々人の生産性が42歳頃から低下することを裏付けただけでなく、ICTスキルとそのトレーニングが彼らの生産性にプラスの効果をもたらすことも示した。その効果は、若い労働者たちに見られるよりも高くさえある!
だが、とても励まされるこうした研究結果には補足を加えねばならない。というのも、格差拡大のリスクと結び付いているからだ。
第一に、これらの結果はフルタイムの賃金労働者しか対象にしておらず、それ以外の労働者についてのデータはあまりに不完全なものか、使えないものだ。
第二に、高齢労働者にとってのこうした良い効果は、高いレベルの教育を受けた労働者、あるいはその仕事がICTの徹底的利用を必要とする労働者にしか及んでいない。
最後に、トレーニングプログラムの特徴として参加者が同類の集団内に限定されており、それはあまり調整されていない。したがってトレーニングプログラムから利益を得ているのは、それを最も必要とする労働者では必ずしもないのだ!
結局のところ、最も高齢の者たちを含むすべての労働者のトレーニングへの投資が、それに関連するコストを平等に負担する政府と企業にとっての優先事項でなければならないとしても、新たなテクノロジーの活用が企業の組織化の形に大きくかかっていることには変わりない。企業はデジタル技術の発展により前向きであったり、あまり前向きでなかったりする。
したがって、デジタル化された世界における労働の未来に関して、いかなる社会を作るかという真の選択がそこにはある。この選択こそ、退職年齢のことばかりに集中しているフランスの公の議論ができるだけ早く取り組まねばならないテーマだ。