東京都は5月24日、住宅への太陽光パネル設置義務化の条例案をまとめた。大手住宅建設事業者に対して、販売戸数の85%以上に太陽光パネルの設置を義務付けるというもの。新築住宅の半数強が対象になるとみられる。
国土交通省の資料を見ると、150万円の太陽光発電システムを設置しても、15年で元が取れるという。だが、ここにはカラクリがある。
太陽光発電システムを設置する建築主は、自家消費分の電気代を減らしたり、電力会社に売電をしたりして、高額な収入を得ることができる。売電時には、電力会社が高く買い上げる制度がある。
けれども、本当は太陽光発電の価値はもっと低い。よく1キロワットの電気1時間分の発電コストを比較して、太陽光発電は安くなった、という意見を聞く。
だが、電気は欲しいときにスイッチを入れて使えるからこそ価値があるのだ。太陽光発電は太陽が照ったときしか発電しないので、そのコストは「押し売りの価格」となる。これに対して、原子力や火力発電は欲しいときに使えるので「買いたい価格」となる。
電気を使う側としては、もちろん天気によらず昼夜を問わず電気は必要だ。だから、太陽光発電を導入しても、太陽が照っていないときのために、火力発電の設備はやはり必要だ。すると、太陽光発電は必然的に二重投資になる。
そうすると、太陽光発電の価値は、せいぜい火力発電の燃料を焚(た)き減らすぐらいしかない。
経済産業省の発電コスト試算によれば、石炭火力とLNG(液化天然ガス)火力の燃料費は、平均して大体1キロワットを1時間で5円程度と見通されている。これが太陽光発電のおかげで実際に節約できる発電コストになる。これは15年の累積で50万円にしかならない。
つまり、150万円の太陽光パネルを購入すると、建築主は15年で元が取れることになっているが、実は発電される電気の価値はわずか50万円しかない。残りの100万円は再生可能エネルギー賦課金や、電気料金のかたちで一般国民の負担になる。
「東京に日当たりも良く広い家を買って、理想的な日照条件で太陽光発電パネルを設置できるお金持ちな人が、一般国民から100万円以上を受け取って太陽光発電を付け、元を取る」というのが、「太陽光発電義務化」の正体だ。
なお、この問題は6月24日までの期限で都が意見募集している。以下のホームページから、ぜひ読者諸君の意見を提出されたい。
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)の改正について(中間のまとめ)」への御意見を募集します。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/05/25/17.html