ウクライナでの戦争で、エネルギー政策を考える前提は根本から変わった。「戦時」における日本のエネルギー政策は如何にあるべきか。脱炭素はモラトリアム(一時停止)とし、原子力と石炭火力を最大限利用する一方で、コスト増になる再エネ支援を停止すべきだ。これにより国内ではエネルギーの安定・安価な供給を実現しつつ、独裁主義に対する民主主義の勝利に寄与できる。
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この「戦時」における日本のエネルギー政策の在り方を論じよう。
いまや日本のエネルギー政策の国際的な地合いは完全に変わった。
ロシアと欧米の対立は長引く恐れが大だ。ロシアは世界市場から締め出されることになり、世界全体で石油・ガスは品薄になり、価格が高騰する。
日本は、「脱炭素」「再エネ最優先」といった政策を続ければ、欧州同様に、エネルギーの安価・安定な供給が損なわれ、ひいては国の独立や安全すら危機に陥るだろう。
まだ「再生可能エネルギーを増やせば化石燃料は要らなくなる」などと主張する人々も多いが、全く現実的ではない。再生可能エネルギーには、化石燃料を一気に代替するような実力は無い。
いま再生可能エネルギーを増やすことは、足元のエネルギー価格高騰に拍車をかけ、インフレをますます昂進させるだけである。
日本は、欧米と共に、自滅的な脱炭素政策を止めて、化石燃料を復活させないといけない。
まずは石炭火力をフル活用すべきだ。また、原子力は再稼働を急ぐべきだ。
これは日本国内のみならず世界のエネルギー価格を下げることに貢献する。そしてじつはこれこそが、エネルギー輸出に財源を依存するロシアにとって最大の経済制裁になる。自由世界の窮状を救いつつ、プーチンに打撃を与えることができる。
他方、国内の工場や家庭では、石油・ガスの価格高騰に直面している。したがって、せめて電気だけでも可能な限り低廉にすべきだ。このため、原子力・石炭火力の活用を図ることに加えて、再生可能エネルギーの導入支援などのコスト増になる政策は停止すべきだ。
以上のような政策は、2030年にCO2をほぼ半減する(46%削減)という現行の政府の脱炭素目標と整合しない。
したがって、脱炭素についてはモラトリアム(一時停止)が必要だ。それによって、石炭の最大限の利用と再エネ導入支援の停止をすることが出来る。
もう1つ。ロシアに気を取られて中国を忘れてはならない。
ますます強大になる中国への依存を見直すべきだ。とくに心配されるのが、電気自動車EVである。EVはバッテリーとモーター製造の為の鉱物資源を大量に必要とする。
だがモーター製造に必要なレアアースであるネオジム、バッテリー製造の原料であるコバルトは、世界において中国企業が圧倒的な生産量シェアを持っている。
中国が例えば台湾に圧力を掛けた時、日本や米国はどう対抗するか。「中国からの資源供給が止まると、日本の工場が停止し、産業が壊滅する」という構図では、経済制裁は出来ない。
つまり、ガスについてロシア、ドイツ、ウクライナの間で成立している力学が、そっくりそのまま、レアアースについて中国、日本、台湾の間でも成立するという訳だ。同じ事は台湾を尖閣に置き換えても当てはまる。
脱炭素一本やりの現行の先進国のエネルギー政策は、独裁政権に力を与え、民主主義を滅ぼそうとしている。日本も緊急にエネルギー政策を再考すべきだ。
以上の提案のポイントをまとめておこう:
戦時のエネルギー政策:
1.現状分析
2.欧米の採るべきアクション
3.日本の採るべきアクション