メディア掲載  エネルギー・環境  2022.03.09

米有力議員:脱炭素を止めることが最大のロシア制裁だ

Daily WiLL Online HPに掲載(2022年3月2日)

エネルギー・環境

ロシアがウクライナに侵攻し欧米は経済制裁を打ち出している。米国共和党では大物議員が激しくバイデン政権の失態を非難しており、元大統領候補のマルコ・ルビオ上院議員は「愚かな脱炭素政策を止めることこそが、最大のロシア制裁だ」としている。さらにテッド・クルーズ上院議員は、バイデン政権は2つの大失敗をしていると分析。失敗の本質とは――。


バイデンの2つの大失敗

元大統領候補のテッド・クルーズ上院議員は、バイデンの大失敗は2つあったとする。

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つはアフガニスタンからの無様な撤退であり、これが「アメリカ弱し」との印象を世界に与えたこと。

もう1つは、前回書いたように、ノルドストリーム2ガスパイプラインにトランプ政権が課していた経済制裁を解除してしまったことだ。

これによってノルドストリーム2の工事が進み、すでに完成して、いつでも使用できる状態になっている。

これはロシアによる欧州への支配力を大いに高めることになった。

ロシアのウクライナ侵攻後、欧州は遅まきながら再び制裁をかけたが、この制裁が長続きするとプーチンは思っていないだろう、クルーズは言う。

というのは、どうせ欧州はガスを必要とするから、ほとぼりが冷めれば、制裁を解除すると読んでいるのではないか、ということだ。クルーズはそうさせないために、米国議会で立法して、制裁を解除できないようにすべきだ、としている。

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テッド・クルーズ インタビュー動画
via www.foxnews.com

愚かな脱炭素を止めるべき

もう1人の有力者、元大統領候補のマルコ・ルビオ上院議員も、同じくアフガニスタンとノルドストリーム2がバイデンの2大失敗だとした。

その上で、ロシアへのガス依存を高めてしまい、ロシアに力を持たせてしまったのは、脱炭素政策のためだと糾弾している。

ルビオは、「最大の対ロシア制裁は、いますぐ愚かなグリーンディールを止めると宣言することだ」と述べている。

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マルコ・ルビオ上院議員インタビュー動画
via video.foxnews.com

アメリカは世界一の産油国・産ガス国であり、石炭埋蔵量は世界一だ。採掘技術も世界最高水準にある。アメリカが本気で資源を採掘し世界に供給すれば、エネルギー価格は大いに下がることは明らかだ。

ソ連崩壊後のロシアはろくに産業が育たず、もっぱらエネルギーの輸出に頼って外貨を獲得し、財政を支えてきた。

図でロシアの品目別輸出額を見ると、石油・ガスなどが圧倒的に多いことが分かる(茶色の箇所)。

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ロシアの品目別輸出額 (2019)
via oec.world

世界的に石油・ガスの価格が下がれば、ロシアにとって大きな経済的痛手になるはずだ。

だが、欧米政府は脱炭素にうつつを抜かし、石油・ガスの採掘を環境規制によって妨げ、石油・ガス企業に圧力をかけて事業や権益を放棄させてきた。結果としてOPECとロシアが世界の石油・ガス市場を支配するようになって、今日の石油・ガス価格の高騰を招いている。

「再生可能エネルギーを大量導入すれば化石燃料は不要になり、価格はタダ同然になる」などという夢物語はもうたくさんだ。

今後ウクライナ情勢がどのように展開するかは予断できないが、米国の脱炭素政策が大幅に見直しされることは間違いなさそうだ。