ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2022.02.21

ワーキング・ペーパー(22-002E) Designing wartime economic controls: Productivity and firm dynamics in the Japanese cotton spinning industry, 1937–1939

本稿はワーキングペーパーです

経済理論

要旨

1937年初め、日本では軍事費支出が拡大し、国際収支バランスを維持するために経済統制が開始された。経済統制は試行錯誤を通じて拡大、実施されていった。綿紡績業はこれらの経済統制によってもっとも大きな影響を受けた産業である。当初、政府は単に綿花輸入への外国為替の割当を削減するという措置を採った。しかし、その結果綿製品の輸出、特に非円ブロック諸国への輸出が減少したため、1938年後半から「輸出入リンク制」と呼ばれる新しい統制の仕組みが導入された。このシステムは、非円ブロック諸国に輸出するインセンティブを企業に与えるとともに、統制の仕組みに市場経済の要素を組み込むよう、意図的にデザインされたものであった。この論文では、企業レベルのパネルデータの分析を通じて、輸出入リンク制の下では、市場経済におけるのと同様に、労働生産性の高い企業の生産増加率が大きかったこと、他方、リンク制導入前の初期の統制システムの下ではこうした関係が見られないこと、を発見した。この企業動態の差違は集計的な労働生産性の変化のパターンに反映した。輸出入リンク制の下では、市場経済におけるのと同様に企業間の資源再配分が集計的労働生産性にプラスの効果を持ったのにたいして、初期の統制の下ではこの効果は見られなかった。これらの発見は、統制の仕方のデザインが統制経済のパフォーマンスに実質的な影響を与えることを示している。

Key words: Economic control, war economy, World War II, productivity, textile industry, Japan

JEL classification numbers: D22, L22, L52, L67, N45, N65

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ワーキング・ペーパー(22-002E) Designing wartime economic controls: Productivity and firm dynamics in the Japanese cotton spinning industry, 1937–1939