メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.02.17

日本人労働者から好まれないテレワーク

Le Mondeに掲載(2021年11月5日)

キヤノングローバル戦略研究所 英文サイトに掲載(2022年1月26日)

セバスチャン・ルシュヴァリエ:フランス・社会科学高等研究院(EHESS)教授、日仏会館・フランス国立日本研究所(UMIFRE 19)研究員、キヤノングローバル戦略研究所インターナショナルシニアフェロー

この記事はアジア経済に関する月1回のコラムシリーズの1本として、2021年11月5日付けの仏ル・モンド紙に当初掲載されたものである。原文は以下のURLからアクセスできる:(翻訳:村松 恭平)https://www.lemonde.fr/idees/article/2021/11/05/le-teletravail-mal-aime-du-travailleur-japonais_6101024_3232.html


セバスチャン・ルシュヴァリエはこの記事のなかで、日本ではテレワークの実施によってかえって生産性が著しく低下したことを明らかにした研究について伝えている。


パンデミックが始まってからテレワークが増えているのは日本も例外ではない。このパンデミック危機以前には日本人サラリーマンの6%がテレワークを実施していたが、2020年春には25%にまで上昇した。しかし同時に、彼らの生産性は平均して約20%減少した。これら二つの主たる結果は、経済学者の大久保敏弘氏とほかの研究者たちが行った調査から得られた(« Teleworker Performance in the COVID-19 Era in Japan », Asian Economic Papers n°20/2, 2020)。

これらの結果には二つの理由で驚かされる。一つ目は、日本ではテレワークがパンデミック以前には(特にサラリーマンの約20%がテレワークを行なっていたヨーロッパと比較して)少ししか広がっていなかったということだ。日本政府は2016年からテレワークの促進策を実施してはいたが、結果が得られなかった。政府が4年間で成し遂げられなかったことを、パンデミックがたった数週間で実現させたのだ!

二つ目として、テレワークのおかげで特に自宅〜職場間の移動時間が減り——日本は通勤時間が世界で最も長い国の一つだ——、生産性を一様に向上させることができるだろうと考えられたが、そうはならなかった。日本で働いているメカニズムは他国よりも複雑で、日本人労働者間の不平等の源であることがわかった。

企業に適合しないテレワーク

テレワークという選択肢は、日本においてなぜこれほどまで軽んじられてきたのか? 一方では、企業マネージメントの考え方において、サラリーマンを通勤させようとする方針は職場あるいは作業場での長時間労働とつながっているからだ(1990年代以降、長時間労働は減少してはいるが)。

他方では、生産性が特にチームワークとインフォーマルなコミュニケーションに基づいているからだ。その二つがテレワークをふさわしくない手段にしている。労働時間の短縮とテレワークの実施による労働生産性の向上を主な狙いとして2016年に安倍政権が着手した改革は、それゆえ失敗した。

 テレワークの増加と結びつけられる、一見矛盾している生産性の低下は、日本企業に支配的な組織方法にテレワークが必ずしも適合しないことが経験によって証明された。したがって、テレワークを効果的に実施するには組織的な変革が必要なのだ。

住宅サイズと家族構成が極めて重要

この日本人研究者たちは、労働者自身によって主観的に測られる「生産効率」という指標に基づいて生産性の変化を分析した。この分析により労働者たちの満足感について、また、彼らが経験した生産性の著しい低下についてもその証拠を得ることができた。結果から読み取られたこの生産性の平均的低下の裏側には、ある大きな格差が実際に隠れている。約30%の労働者が自身の仕事の効率性は以前と変わっていないか、あるいは少し上がったとさえ回答したのに対し、50%以上が効率性の低下を認めたのだ。

こうした差は、労働者個々人の特徴(教育水準やITツールの習熟度)よりも、自宅や職場といった彼らの環境によって説明がつく。住居の大きさと家族構成が極めて重要に思われる。同様に、テレワークのような「変則的な」仕事の組織形態をパンデミック以前にすでに導入していた企業は、効率性とその拡張、さらにはその一般化といった観点で最も利益を得た。

支配的な日本の生産モデルに終止符を打つことだけが、この国におけるテレワークの発展を可能にするだろう。テレワークというパンデミックによる単なる成り行き上の結果は、労働生産性の観点ではそこから利益は得られず、逆に、サラリーマン同士の不平等、企業間の不平等を新たに増大させてしまう。