<主なポイント>
〇21年4Qの実質GDP成長率は、前年比+4.0%と、前期(同+4.9%)に比べ低下。引き続き輸出の伸びが高い一方、内需の回復が鈍い状況が持続。21年通年では8.1%。
〇輸出は、コロナの影響で生産の回復が遅れている他国の生産を中国が代替する状況が予想以上に長引いているほか、欧米諸国の景気回復要因も加わり、高い伸びが持続。
〇投資は、製造業設備投資が輸出の好調等を背景に設備稼働率と企業収益率が高水準を維持しているため、民間企業を中心に堅調を維持。
〇不動産開発投資は、恒大集団等の経営破綻問題が表面化したことを機に、3級以下の地方都市を中心に価格低下期待が強まり、不動産買い控えの動きが拡大。その結果、4Qの投資額は前年割れ。不動産価格の低下期待が反転する時期は不透明。
〇インフラ建設投資については、不動産価格の大幅下落を背景に、多くの地方政府が不動産収入減から深刻な財源難に陥ったため、インフラ建設投資の伸びが低下。
〇消費は、10~12月に各地で小規模の新型コロナのクラスターが発生したため、飲食、交通、旅行関連の需要が影響を受けた。
〇マクロ的には労働需給はタイトだが、労働供給と労働需要の間でのミスマッチが生じている。近年、大卒者数が急増しているため、以前の大卒のように就職先を選り好みできる状況でなくなっている。一方、大学生はオフィスでのデスクワークに対する選好が強く、工場やサービス業の現場での仕事を拒否する傾向が一般的である。
〇2022年の中国経済を展望すれば、実質GDP成長率が5.0~5.5%に達するとの見方が一般的である。その要因として指摘されている点は以下の通り。第1に、今秋に第20回党大会が開催されるため、中央政府が経済安定確保のため経済成長率5%の達成を目指す可能性が高いこと。第2に、昨年12月の中央経済工作会議で、インフラ建設投資の前倒し等による経済の安定確保が今年の目標とされていること。第3に、新型コロナの鎮静化と不動産市場の先行きの改善方向が予想されていること。
〇これに対して、22年の実質成長率が5%に達しないリスク要因として、次の点が指摘されている。第1に、地方政府のインフラ建設投資拡大意欲に関する不確実性、第2に、不動産市場回復時期の不透明さ、第3に、新型コロナ感染拡大長期化の可能性。