コラム 国際交流 2022.02.09
様々な分野におけるロボット、そしてロボットを制御するための人工知能(AI)に関する関心と研究が加速度的に拡大していることは衆人の知るところだ。第2回目の「ルネッサンス時代を迎える人間・ロボット共生社会」では、ロボットを「如何に導入するか」に関して、幣研究所で検討している内容の一部を簡単に解説して読者諸兄姉の参考にしたい。
ベルリンに在るシンクタンク、ドイツ経済研究所(Deutsches Institut für Wirtschaftsforschung (DIW))は、昨年12月1日に公表したニューズレターの冒頭でAIとロボットに関する小論を掲載した(「ドイツにおける人工知能: 労働者のAIシステムの無意識的利用に関して」)。この小論の中で、シンンタンクの研究者は、ベルリン工科大学(Technische Universität Berlin (TU Berlin))の研究者と共に「職場での人間と機械との協力(der Zusammenarbeit zwischen Menschen und Maschinen am Arbeitsplatz)」を今後注力する研究分野になると述べた[1]。
かくして我々は今、ロボットの導入・利用に関し、「導入か否か」ではなく、「如何に導入するか」について、考えてゆかなくてはならない時を迎えているのだ。しかもロボットの設置・活用は、職場だけでなく、公共施設や運輸交通網といった公共の場や私的な場である家庭内にまで広がりつつあるのだ。
まず職場でのロボットとして思い浮かべるのは“工場におけるロボット”だ。工場で活躍する産業用ロボットは長年日本企業が主導的な役割を果たしてきており、ここで詳述する必要は無いであろう。だが、もしも留意すべき点があるならば、上述した「職場での人間と機械との協力」という視点から考えるとき、日本以上にロボットを“有効”に活用している国がある点だ。表1は、国際ロボット連盟(International Federation of Robotics (IFR))が公表している製造業分野における主要国におけるロボット密度を示したものである。
表1 主要国の製造業におけるロボット密度 (労働者1万人当たりのロボット導入台数) Source: International Federation of Robotics (IFR), World Robotics, Frankfurt am Main, 2019, 2020, and 2021.
この表では、日本の数値を赤で、また日本より高いロボット密度を持つ国の数値を太字で示している。当然のことながら、ロボットといっても多種多様であるため、ロボット1台を単位として密度を比較すること自体限界がある。この点に留意しつつ、表を見ると、シンガポールや韓国が日本以上にロボット密度が高いことが分かる。
同時に留意すべき点は、ロボットの導入台数と前述のロボット密度との間には大きな差があることだ。表2は国際ロボット連盟(IFR)集計の産業用ロボット新規設置台数だ。これに拠れば、最も積極的に産業用ロボットを新規導入しているのは「世界の工場」である中国だ。中国は2019年こそ主要国と同様若干低下したものの、2020年にはすぐさま回復の兆しを示した。
表2 主要国の産業用ロボット設置台数 (千台)Source: International Federation of Robotics (IFR), World Robotics, Frankfurt am Main, 2019, 2020, and 2021.
上記2つの表を合わせて言えることとは、産業分野において導入台数とロボット密度とでは大きな差が存在する点である。従ってロボット活用に際して、我々は「導入するか否か」ではなく、「如何に導入するか」を考えるとき、導入台数のみを考慮するだけでなく、ロボットの種類や機能、そして導入分野や活用方法を考えてゆかなくてはならないのだ。
昨年夏、海外の友人達から筆者に対し皮肉に満ちたメッセージが届いた。それは「日本がロボット先進国だと思っていたが、実はそうではなかった」という内容のメッセージであった。彼等が根拠としたのは、米国のマスメディアCNNによる記事である[2]。
この記事によれば、シンガポールのチャンギ・ジェネラル・ホスピタル(CGH)で、50種類以上のロボットが医療現場で活用されている現状が紹介されている。同記事はシンガポールの事例と同時に、デンマークにおけるコペンハーゲン大学病院についても言及している。勿論、日本でも積極的にロボットを活用している医療現場があると考えられる。しかしながら、特定種類の日本製ロボットの紹介は別として、CNNの記事に見られるような形で海外のマスメディアによって広く紹介された事例は、筆者の知る限り、残念ながら無いのだ。
冒頭で示した産業用ロボットにおけるロボット密度でも、日本を上回る数値を記録していたのがシンガポールだ。非製造業分野においても、先進事例として挙げられているのがシンガポールということで、我々はシンガポール、そしてデンマーク等の先進事例を参考にしつつ、更なる洗練化を目的として、日本国内において「如何に導入するか」に関し、再考する必要があるのだ。
前回の「ルネッサンス時代を迎える人間・ロボット共生社会」で、ロボット導入に関する代表的研究者の一人、オーフス大学のヨハンナ・ザイプト教授の言葉を紹介した。それをここに再掲する—「ソーシャル・ロボットは現在、次のような形で適用されている。高齢者介護(ケア・ロボット)、現状認識訓練、自閉症治療。だが今後、しかも部分的には既に適用されている例として、アシスタント・ロボット、友人ロボット、ロマンティック・ロボット、ロボット一般教師・家庭教師、ロボット案内者、受付ロボット、ロボット運転手、ロボット兵士、子守ロボットが挙げられる」[3]。
冒頭のドイツのシンクタンク(DIW)が主張した通り、職場でのロボットと人間との協業関係がさらに高度化・洗練化されるための方策が研究され、検討される必要がある。換言すれば、ロボット導入による失業を恐れて「導入か否か」を問題にする次元は既に超えたと考えなくてはならない。我々が今抱えているロボットに関する課題は、「如何に導入するか」であり、それに加えて「如何に使うか」を念頭にして「何を創るか」、「誰(どの企業)が創るか」が課題なのだ。こうした課題を克服した後、更に我々は「革新的ロボットは如何にして生まれるか」、「ロボットの革新的活用は如何なる社会システムの下で可能か」という問題を解決してこそ、人間・ロボット共生社会のルネッサンスにようやく到達することを覚悟しなければならない。
上述した「如何に導入するか」という“How”の問題は、「如何に使うか」という問題でもあり、そのためには「何を創るか」という“What kind of robot”の問題を提起する。本稿では、サービスロボットの導入に関し、「何に使うか」、更にはそのために「何を創るか」と考えてみたい。
昨年夏、筆者は一般社団法人日本ロボット工業会が発行する『ロボット』第261号(昨年7月)に、「コロナ禍におけるサービスロボット分野のビジネス・モデル変革」と題し、小論を公表した。この小論の冒頭で筆者は、デンマークの会社(UVD Robots)が開発した自立型殺菌ロボットに触れた。2020年年初から新型コロナウイルス危機が世界中に蔓延し、除菌・防菌が急務となる中、看護師や専門の殺菌担当スタッフの力を借りることなく、短時間で病室を殺菌する作業が求められた。この「除菌・防菌のために」という社会的要求に応えたロボットが絶対的に必要になったのだ。それに即座に対応した代表的企業が(日本ではなく)デンマークの会社であった。その会社(UVD Robots社)が開発したロボットは、病室の各主要部分の殺菌に1~2分を要し、病室全体では10~15分で殺菌可能であった。
この問題に関し、再び国際ロボット連盟(IFR)の調査統計に目を向けてみよう。表3は、専門サービス及び消費者個人サービスに関連したロボットの販売額を示している。尚この表では前年比50%以上増加した項目を赤字で示している。
表3 専門サービス及び消費者サービス関連のロボット販売額 (100万米ドル)
Note 1: Figures are only based on data submitted by respondent companies.
Note 2: Only figures for principal subcategories within each category are exhibited.
Source: International Federation of Robotics (IFR), World Robotics 2021—Service Robots, Frankfurt am Main, October 2021.
2019年末に勃発した新型コロナウイルス危機の影響で、①前述のUVD Robots社が開発したロボットのような労働者の除菌・防菌作業を補佐・代替する消毒ロボット、②調理場・食事場で“人の介在”を排除する調理・飲料準備ロボット、③人災・天災や薬物や病原菌の汚染地域、また深夜等の時間帯や高所等の危険な所で、実際に人間が行動出来ない時間・空間で活躍する探索・救出・警備ロボットが、技術進歩が著しい医療関連ロボットと共に増加していることが理解出来る。そしてこの表が専門サービスロボット分野では医療用ロボットと運輸ロボットが主要分野であり、消費者サービスロボット分野では、家事サービスロボット、特に屋内床掃除ロボットが主要分野であることを示している。
以上、サービス分野において「何に使うか」、「何を創るか」、そして「如何なるロボットが作られているか」について概観した後、“Who”の問題、即ち「誰(どの企業)が作るか」に関し、上述の主要サービス分野に限定して考察してみよう。同時に、IFR資料を中心にして「如何なる日本企業が現在ロボット開発に携わっているか」を概観してみることにする。
留意すべき点は、ロボット産業は成熟産業ではなく、日々成長・変態している産業である。このため、当然のことながらIFRに未加盟、未報告の企業も存在する点だ。この点をわきまえた上で各種資料をまとめると次のようになる。
専門サービスで最も規模が大きく、また期待されるのは医療分野だ。この分野における開発製造に携わる世界の企業を見ると、医療診断(diagnostics)ロボット10社、手術(surgery)ロボット47社、リハビリ・非侵襲的治療(rehabilitation and non-invasive therapy)ロボット57社、実験室分析(laboratory analysis)ロボット22社、その他医療関連ロボット34社となっている。
こうしたなかで日本の動きとしては、(a)オリンパスが手術支援ロボットを、(b)メディカロイドが手術支援ロボットシステム用の「HF シリーズ インストゥルメント Plus(バーサタイルグラスパ)」を、(c)理研が自動細胞培養ロボットを開発している点が注目される。リハビリ関連では、トヨタによるリハビリテーション支援ロボット「ウェルウォーク WW-1000」が代表例として挙げられる。その他医療関連分野として、パナソニックの病院内自律搬送ロボット「ホスピ―」はシンガポールのCGHでも利用されている。
専門サービスで医療に次いで規模が大きいのは運輸分野だ。この分野におけるロボット開発製造に携わる世界の企業は非常に多く、その内訳は次のようになる。(a)工場・倉庫等屋内運搬(Indoor Environments without Public Traffic)ロボット211社、(b)病院・ホテル・レストラン等屋内運搬(Indoor Environments with Public Traffic)ロボット66社、(c)港湾・空港等屋外運搬(Outdoor Environments without Public Traffic)ロボット35社、(d)在庫管理(Inventory)ロボット47社。このほかに販売金額自体は少額だが、屋外運搬(Outdoor Environments with Public Traffic)ロボット46社、その他運輸ロボット30社が存在する。
日本企業としては、協働運搬ロボット「サウザー」を開発した2012年設立のドーグ、棚搬送型ロボット「レンジャーGTP』を開発した2015年設立のグラウンド、自動配送ロボットを開発した本田技研、自律走行ロボットを販売する村田機械、無人走行ロボットフォークリフトを開発した中西金属工業、無人搬送台車を開発したオムロン、自律搬送ロボットを製造したパナソニック、シンテックホズミ、東芝、そして2001年設立のZMPが挙げられる。
この分野のロボットを製造している企業は世界で41社存在し、特徴的なのはアジア系企業が22社と半数を占めている点である。
日本企業としては、床洗浄機「イージーロボ」を開発したアマノはじめ、掃除ロボットを開発販売している日立、パナソニック、東芝、トヨタが挙げられる。
付言すると業務用の清掃用ロボットとして、中西金属工業による床洗浄ロボット「ロボクリーパー」、日本信号の清掃ロボット「CLINABO」、浦上技術研究所の吸着自走式清掃ロボットが注目される。また特殊な清掃ロボットとして未来機械のソーラーパネル清掃ロボットも太陽エネルギー利用の発展に伴って利用が拡大するものと考えられる。
表3の中で、データに赤色を付して示した急成長分野、即ち消毒、探索・救出・警備、そして調理・飲料準備のためのロボットについても、「誰(どの企業)が創るのか」について簡単に紹介する。
消毒ロボットを供給している企業は世界で55社。地域別に見ると、欧州系企業が24社、アジア系が20社、北米系が10社である。この分野に日本企業として挙げられているのはソフトバンクロボティクスだ。同社は除菌清掃ロボットWhiz(ウィズ)を提供している。
探索・救出・警備ロボットについては、以下の3種類に細分化されて示されている。
製造企業は、全世界で38社(欧州18社、北米14社、アジア6社)であり、日本企業としては、コンクリート壁面の劣化を検査するための壁面診断ロボット「のぼる君」を提供する小川優機製作所がIFRの資料に記載されている。
製造する企業は全世界で41社(欧州22社、北米13社、アジア5社)であり、日本企業としては次の企業が挙げられる。(a)日立GEニュークリア・エナジー (福島第一原子力発電所での燃料取り出しに向けた調査用の水中走行遊泳型ロボット・形状変化型ロボットを開発)、(b)ハイボット (2004年に東京工業大学で生まれ、配管点検用管内移動ロボット等を開発)、(c)石川鉄工所 (管渠検査ロボット「もぐりんこ」を提供)、(d)イクシス (点検・業務用ロボットや特殊環境対応型ロボットを開発)、(e)三菱重工 (プラント巡回点検ロボット「EX ROVR」を開発)、(f)キュー・アイ (管内検査カメラや水中カメラを装備したロボットを提供)。
専門サービス分野で、警備ロボットは世界で40社から供給されている。その内訳は欧州が22、北米が11、アジアが6である。加えて業務用・家庭用の両方で活用される企業は世界で60社。欧州系企業が25社で、米国系が18社、アジア系が17社である。日本企業としては、綜合警備保障(ALSOK)が警備・案内ロボット「REBORG-Z」を、、セコムが巡回ロボット「セコムロボットX」を、ユーゴーが警備・監視システムを、そしてZMPが警備ロボ「パトロ」を開発販売している。
供給している企業は世界全体で23社。内訳は欧州とアジアが共に9社で北米が5社。日本企業としては食品製造過程でのクロスコンタミネーション(交叉汚染)防止ロボットを提供する村田機械が挙げられる。
以上、ロボットは「導入か否か」ではなく、「如何に導入するか」、更には「何を誰(とどの企業)が創るか」を概観してきた。だが、前述した通り、人間・ロボット共生社会のルネッサンスに到達するためには、「革新的ロボットは如何にして生まれるか」や「ロボットの革新的活用は如何なる社会システムの下で可能か」という問題を解決しなくてはならない。これに関して、幣研究所で現在議論している点をここに簡単に紹介する。
第1回の「ルネッサンス時代を迎える人間・ロボット共生社会」で、ロボット導入に関する代表的研究者の一人、オーフス大学のヨハンナ・ザイプト教授の議論、特に関連した専門分野を一括して全体的に活用するアプローチ(transdiscipline)を紹介した。
即ち従来の方法である①個々の専門分野を並列的に活用するアプローチ(multidiscipline)でもなく、②複数の専門分野を「串刺し」して活用する学際的アプローチ(interdiscipline)でもなく、それとは異なる新しい方法でなければ「革新的ロボット」は生まれない。換言すれば①や②といった複数の専門分野を単純にまとめた研究アプローチ(pluridisciplinary approaches)ではなく、統合され融合された、言わば“合金”のように個々の専門性の性質が変わったような研究アプローチが必要なのである。
これに関して既に様々な研究がなされているので、慧眼な読者諸兄姉の中には理解している人々も多いと思うが、ここで念のために最近の2文献を紹介する。
最初の文献は、共同的創造(共創“co-creation”)活動に関して、昨年6月に経済協力開発機構(OECD)が公表した資料だ(“Knowledge Co-Creation in the 21st Century: A Cross-Country Experience-Based Policy Report,” Science, Technology and Industry Policy Paper No. 115)。その中に次のような表現がある。
「“共創的な取り組み(co-creation initiatives)”における主たる特徴とは、そうした取り組みが、補完的な性格を持つ専門分野の人々を呼び集めてまとめていた」点であり、「成功の主たる基準となったのは、必要とされる知識、技術、資源、人脈、そして資金を持ったパートナーの選択」であった、と。
OECDによるこの報告書が発するメッセージを筆者が自分なりに解釈すると、「どんな分野のロボットを創るにしても、密接に関連した分野の研究者、そして各種情報、資材や資金といった資源を単純に結合するだけでなく、それらを全体的に統合・融合しなければ、望ましい目的を達成させるロボットは完成しない」ということだ。
ものごとを完成するには、知識と情報を有するヒト、加えてヒトを動かすための物的資源、並びに個性の強い研究者を納得させるリーダーシップとそうした研究者集団を一つにまとめ上げるチームワーク錬成術等の人的資源及び運営技法、更にはプロジェクトの安定した継続を支える資金が必要なのだ。換言すれば、ヒト・モノ・カネが全体として統合化・融合化しなくては、何事も成し得ないのである。
上述した統合化・融合化アプローチ(transdiscipline)について、2.2で触れた医療用ロボットに沿った形で、第2番目の文献、即ちOECDによる別の資料[4]で説明してみたい。
図1は“e-ヘルス(eHealth)”を実現させる基本的技術的構成要素を示した図だ。この図は前記のOECDの資料と同時期(2021年6月)に公表された別の資料の中に掲載されている。同図の中で表3の医療用ロボット(Medical Robotics)は、図の右側に在る①遠隔医療(Telehealth (monitoring, prevention & treatment at a distance)、②看護・介護生活(assisted living, e.g. sensors, robots))、③スマートフォンを活用したモバイル・ヘルス(mHealth (mobile health devices & apps))に相当する。
この図が示す通り、上記①②③だけ、即ち医療用ロボットの発達だけでは、情報通信技術(ICT)を活用して有効性・効率性を高めた現代医療である“e-ヘルス(eHealth)”は実現出来ない。①②③という医療用ロボットに加え、左側に在る④電子健康記録(Electronic Health Record (EHR))、⑤データ・ドリブンに基づく自動化・予測・意思決定支援、更にはAI・機械学習(data-driven automation, prediction & decision-support also AI & ML)、そして⑥ICTを駆使した調剤薬局業務と診療予約体制(ePrescribing, eAppointment)が一つでも欠けたならば、十全な“e-ヘルス”は実現出来ない。
図1 “e-ヘルス(eHealth)”を実現させる基本的技術的構成要素
Source: OECD, “Empowering the Health Workforce to Make the Most of the Digital Revolution, June 2021.
新型コロナウイルス危機の勃発時、接種確認アプリや電子証明書アプリに関して、我が国のデジタル化に絡んだ諸問題が噴出し、我が国全体の情報通信技術(ICT)の未発達状態が顕在化した。このため政府による現在のデジタル関連諸施策に国民が期待するところは非常に大きいのである。
図2はOECDが公表した医療データの利用可能性・充実度を評価・国際比較したものだ。これに拠れば、日本の医療分野におけるデータのデジタル化は未だ“道半ば”と言わざるを得ない。従って日本が、たとえ高い知能と技量を持つ医師・看護師や最先端の医療設備、更には最先端の医療用ロボットを擁していたとしても、優れた“e-ヘルス(eHealth)”を国民は享受出来ないのだ。
図2 OECD諸国における医療データの評価と国際比較 (8点満点による評価)Note: The details of evaluation are shown in “Survey Results: National Health Data Infrastructure and Governance,” OECD Health Working Paper No. 127, April 2021.
Source: OECD, “Empowering the Health Workforce to Make the Most of the Digital Revolution, June 2021.
以上、「ルネッサンス時代を迎える人間・ロボット共生社会: 研究シリーズNo. 2」では、IFR資料等を基に、我が国サービスロボット開発の現状と課題を論じた。
今年、筆者はドバイとバルセロナで開催されるロボット開発に関する国際会議に参加し発表する予定だ。その機会を利用し、優れた旧友との情報交換と共に新たに優れたヒトとのネットワークを築き上げ、全地球的で統合的な知見を求めた結果を読者諸兄姉に届けたいと願っている。そして全地球的統合研究(Global Transdisciplinary)な共創(Co-Creation)でロボット開発を可能にする枠組みを、この日本において同じ志を持つ人々と共に築き上げたいと考えている。
[1] Deutsches Institut für Wirtschaftsforschung (DIW), „Künstliche Intelligenz in Deutschland: Erwerbstätige wissen oft nicht, dass sie mit KI-basierten Systemen arbeiten“, DIW Wochenbericht Nr. 48, 1 Dezember, S. 789.
[2] Cable News Network (CNN) (Rebecca Cairns), “More Than 50 Robots Are Working at Singapore's High-Tech Hospital,” August 26, 2021.
[3] Seibt, Johanna, “Integral Social Robotics—A New Framework for Culturally Sustainable Technology Solutions,” Carlsberg Fondet, 2016.
[4] Socha-Dietrich, Karolina, “Empowering the Health Workforce to Make the Most of the Digital Revolution,” Health Working Paper No. 129, June 2021.