論文 エネルギー・環境 2022.02.07
~デンマークの政策研究~
キヤノングローバル戦略研究所 英文サイトに掲載(2021年12月21日)
1970年代、デンマークは化石燃料と中東からの石油に全面的に依存していましたが、今やクリーンエネルギー推進のフロントランナーへと進化し、2050年までの気候中立(二酸化炭素排出量実質ゼロ)達成を目指しています。デンマークにおけるこうした発展のカギは、エネルギー効率や省エネ、再生可能エネルギーを推進する包括的なエネルギー政策にあります。これらの政策は、政権が交代しても継続的に実施・強化されてきました。
このレポートではまず、1970年代以降に成功した気候変動・エネルギー政策を概観します。これらの政策は、政治的枠組みの中での調整、総合的なアプローチ、そして社会の全構成員の包摂を通じて生み出されてきました。とりわけ、過去40年間における風力発電の推進に焦点を当てます。これによって風力タービンメーカー世界最大手のヴェスタスや、洋上風力エネルギー開発で世界トップのオーステッドといった企業が生まれました。
レポートではさらに、2020年に導入されたデンマーク気候変動適応法や、2030年までに温室効果ガス排出を1990年比で70%削減するための10年計画についても分析します。この10年計画の目標は野心的です。なぜなら、2030年までにCO2eをさらに2,000万トン削減しなければならないからです。ただし、2020年6月以降に導入された政策によって2030年までに削減される温室効果ガスは1,000万トンのCO2eに相当する見込みで、これだけで55%の削減に相当します。70%削減の目標達成は依然として容易ではありませんが、今後新たな政策が導入される予定であり、気候変動適応法の体系的な取り組みは、政策を忠実に遂行するプレッシャーを政権に与え続けることになります。
IEAの試算[1]で温室効果ガス排出量の3分の2を占め、グリーン・トランジション(エコ推進)のカギになるエネルギーについても、このレポートで掘り下げます。
[1] IEA, 「気候変動」, https://www.iea.org/topics/climate-change.
目次
1. 1970年代以降のデンマークのエネルギー事情... 3
1.1 デンマークの気候変動政策の枠組み... 5
1.1.1 欧州連合(EU)の一員として... 9
1.1.2 デンマークの主要な気候変動・エネルギー制度... 11
1.2 1970年代以降のデンマークの気候変動・エネルギー政策の主要要素... 13
1.3 デンマークの風力産業の成功... 16
2. 現在のデンマークの気候変動・エネルギー政策... 20
2.1 2020年6月に施行された気候変動適応法.... 20
2.2 政府の現在の全体戦略... 21
2.2.1 デンマーク社会のグリーン・トランジションへの関与... 22
2.3 重要な政治的エネルギー協定... 25
3. デンマークのエネルギー政策と2030年の気候目標到達可能性の評価... 29
3.1 2030年の気候目標達成可能性についてのDCCCの評価... 29
3.1.1 DCCCの評価以後の進展... 32
3.2 デンマークの気候変動政策へのIEAの総合的な評価.... 33
4. 要約... 34
5. 結論... 36
参考文献... 37