メディア掲載  エネルギー・環境  2021.12.23

IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか

アゴラ(2021年12月17日)に掲載

エネルギー・環境

IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。


以前、IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのかで、IPCC報告の図(図1として以下に再掲)では北極の海氷が減っていて、南極の海氷は増えていると書いた。だが、地球全体の海氷の図は無かった。
fig01_sugiyama.png

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一方で、米国航空宇宙局NASAによると海氷の面積は変わっていない、とする記事が出た

これによると、地球全体での海氷面積は図2のようになっている。縦軸は地球全体の面積に対する比率、直線は全期間での回帰直線である。

fig02_sugiyama.png2

北極では海氷面積は下がってきているが(図3)、
fig03_sugiyama.png

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逆に南極では大幅に増加している(図4)。その合計で、地球全体ではほとんど横ばいだったということだ。
fig04_sugiyama.png

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あれ? IPCCのレポートも3つのデータセットのうち2つはNASAだから、おなじデータを見ているはずだが...

そう思ってIPCCの図1を見ていると、3つ気づいた。

1に、南極と北極の合計の図が無い。合計すると、少なくとも2015年ごろまでは、地球全体では海氷面積がほぼ一定という図になったはずだ。

第2に、IPCCのグラフは回帰直線が書いていない。代わりに、観測の初めの10年と終わりの10年の平均だけを書いている。

第3に、IPCCは特定の月だけ取り出しており、通年で図を書いていない。

つまり、IPCCのデータでも、南極と北極を合計して、通年でデータをとり、回帰直線を書けば、海氷は減っていない、と言うグラフになったのではないか?

合計しなかった理由は何か。回帰直線ではなく10年平均を書いた理由は何か。通年でデータを書かなかった理由は何か。


1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

次回:「IPCC報告の論点㉟」に続く