資本主義が大きく変わり「グレート・リセット」されて、2050年にはCO2排出量がゼロになる(=脱炭素)、という将来シナリオがある。
それは、環境問題に目覚めた国民が、政治を動かし、金融機関・企業が投資をすることで再生可能エネルギー・電気自動車などのグリーン技術が発達し、普及することで実現する、とされる。
このような将来シナリオは、今や、国連、G7諸国政府、日本政府、経団連など大手経済団体、NHK・日本経済新聞・朝日新聞などの大手メディアが共有する「公式の将来」となっている。
だが、この将来像は、技術的・経済的・政治的実現可能性は極めて乏しい。
それにも関わらず、いま日本の主要企業は、軒並み公式にはこの「脱炭素」を掲げている。
だが正にこのために、事業を預かる現場では混乱が起きている。不可能に向かって突き進むという事業計画を立て、実施しなければならないからだ。
ありそうにない将来像に基づいて事業を計画・実施することは、企業としての経営判断・投資判断を大きく歪め、利益を損ない、事業の存続すら危うくする。
そもそも将来は不確実であるため、複数の将来シナリオを描いた上で、ロバストな事業計画を立てる必要がある。これがシェル流のシナリオプランニングの思想と手法の要諦である。
本稿は、このシェル流のシナリオプランニングの実践として、異なるグローバルシナリオを提示する。
手順として、まず2021年11月に開催された国連気候会議COP26の分析からはじめる。次いで2022年以降にエネルギー分野で起きうる4つの重大イベントをミニ・シナリオという形で提示する。最後に、以上の要素に基づいてグローバル・シナリオを提示する。シナリオはグレート・リセットが成功する「再起動」、および失敗する「脱線」「反抗」の3つである。