コラム  グローバルエコノミー  2021.11.26

中国経済は下振れの中で安定確保

~先行きも当面は下押し圧力が持続~

<オンライン方式等による北京・上海面談報告(2021年10月19日~11月2日)>

国際政治・外交 中国

<主なポイント>

〇21年3Qの実質GDP成長率は、前年比+4.9%と、前期(同+7.9%)に比べ低下。19年同期比2年平均伸び率を見ても+4.9%と前期(同+5.5%)を下回った。足許の回復は、引き続き輸出の伸びが高い一方、内需の回復がやや鈍いことが特徴。

〇輸出は、コロナの影響で生産の回復が遅れている他国の生産を中国が代替する状況が予想以上に長引いているほか、欧米諸国の景気回復要因も加わり、高い伸びが持続。

〇投資は、製造業設備投資が輸出の好調等を背景に設備稼働率と企業収益率が高水準を維持しているため、民間企業を中心に堅調を維持。

〇米中対立に伴う対中輸出規制については、これまでのところ米国商務省が米国企業の輸出申請の大部分に対して特例扱いを認めているため、影響は深刻化していない。

〇不動産開発投資については、昨年夏場以降、金融当局が不動産価格の上昇に警戒感を強め、金融機関、デベロッパーに対して不動産関連投資抑制政策を強化。そこに年初来の住宅ローンの高い伸びが続き、金融機関が今年の年間貸出枠をほぼ使い切ったため、5、6月以降、住宅ローンの借入難が加わった。このように不動産市場管理政策の効果が顕現化してきた結果、業界最大の恒大集団の経営破綻問題が表面化した。

〇インフラ建設投資については、不動産価格の大幅下落を背景に、多くの地方政府が不動産の売却により確保を予定していた収入を得られなくなり、深刻な財源難に陥った。それが主因となって、インフラ建設投資の伸びが低下した。

〇消費は、7月下旬から8月にかけて各地で小規模の新型コロナのクラスターが発生したため、飲食、交通、旅行関連の需要が影響を受けた。社会消費品小売総額前年比は7月の+8.5%から8月は同+2.5%にまで急落したが、9月には新型コロナ感染拡大が鎮静化し、同+4.4%まで回復した。

〇先行き見通しについては、4Qの実質GDP成長率前年比は+4.0%前後、21年通年では同+8.0~8.1%、22年は同+5.0~5.5%と予想する見方が多い。ただし、一部の専門家は、来年は改善要素が見当たらず、通年で5%割れの可能性もあると指摘。

〇電力不足問題は10月以降改善に向かっている。ただし、今年の冬は寒波が来るとの予測があり、電力不足問題が終息するのは2月頃になるとの見方が多い。これにより日本企業が中国事業の基本方針の見直しを検討する動きは見られていない。

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中国経済は下振れの中で安定確保