<主なポイント>
〇 バイデン政権の支持率が夏場以降低下傾向をたどっている。10月上旬には支持率がついに40%を割った。原因としては、アフガニスタンからの撤退作戦に対する批判、長引くインフレとコロナ、民主・共和党間の深刻な対立などが指摘されている。
〇 ソーシャルメディアから得られる情報は、各人の好みに合わせた情報が集まるように自動的に情報が選別される仕組みになっている。政治についても支持政党の主張に合う情報が配信され、中立、客観的な情報が共有されず、情報の分断が党派間対立を煽る効果を持っている。このため、党派間対立が融和に向かう可能性は低い。
〇 同盟国との協調重視方針を掲げるバイデン政権の下、米国EU関係はトランプ政権時代よりはるかに良好な関係にある。しかし、アフガニスタンからの撤退作戦、米国の豪州に対する原子力潜水艦建造技術供与の決定とそれに伴う豪仏間の通常潜水艦調達契約の破棄はいずれも十分な事前説明なく、米国が一方的に決定したため、EUは米国が同盟国を重視する方針を掲げていることに対して疑念を強めた。
〇 米国による豪州に対する原潜建造技術の供与は中国にとっては軍事的脅威の増大を意味する。最近の台湾防空識別圏への中国軍機の進入増加の背景は、こうした米国による軍事的圧力増大に対する対抗姿勢を示すことが目的であると見られている。
〇 米国の狙いはアジアでの軍備拡張競争を加速させ、米国からアジア諸国への軍事的支援の拡大により、アジアにおける米国のプレゼンスを回復することにある。
〇 AUKUSがアジアにおける軍備拡大競争を煽ることについて、EU諸国の有識者の間では賛成できないとの見方が多い。彼らは米国の短期的利益を追求する姿勢が、中国の核兵器配備増強の口実を与えてしまうことを懸念している。
〇 EUの対中認識は基本的に米国と足並みがそろっている。しかし、中国を国際協調行動に巻き込んでいくためには、米国政府が実施している経済制裁や軍事的圧力は現実的な対策ではなく、効果も乏しいと評価している。EUはTPPなど中国との建設的な対話の場を維持し、中国の自発的変化を促すことが有効であると考えている。
〇 EUは中国がグローバルスタンダードのルールを遵守するように導くことを目指している。それに対して米国は中国を全面否定する姿勢をとっている。
〇 9月入り後、バイデン大統領と習近平主席の電話会談以降、バイデン大統領が主導する形で外交関係の修復に動き出した。それに伴い米中対話が増加傾向にあり、米中関係が改善に向かう兆しが見られ始めている。