日本の大新聞とテレビを見ていると、「『脱炭素』は世界の潮流」で、日本は大変遅れていることになっている。それで「脱炭素」政策を説く政治家がいる。
いわく、「日本は太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が遅れている」「ハイブリッド自動車は時代遅れで、もう世界は電気自動車だ」「海外はみんなCO2(二酸化炭素)を排出する火力発電など止めようとしているのに、日本だけが続けている」「金融界は環境金融へと動いている」「このままでは、だれも日本へ投資してくれない」「CO2を排出して製造した日本製品は世界で売れなくなる」…。
よくもまあ、こんな大嘘を毎日毎日報道し続けるものだ。
実態はどうかといえば、「脱炭素」は世界の潮流などではない。
確かに、先進国は軒並み「2050年までにCO2をゼロにする」といっている。また、「30年までにCO2をおおむね半分にする」とも言っている。だが、言っているだけで、実態は全然違う。
ジョー・バイデン米政権は「脱炭素」に熱心だが、これは米国の総意からは程遠い。国の半分を占める共和党は、そもそも「気候危機説など嘘だ」と知っていて、「脱炭素など無用だ」とする。ドナルド・トランプ前大統領だけが例外なのではない。
それに米国は世界最大の産油国であり、産ガス国である。石炭埋蔵量も世界一で、日本の消費量に匹敵するぐらい大量に輸出している。ちなみに日本にも輸出している。エネルギーを有する州は多く、当然、その産業を守る。だから、環境税やCO2規制は議会を通らない。実は、米国はCO2をほとんど減らさない。
中国は、日本の10倍のCO2を出しており、今後5年であと日本1つ分さらにCO2を増やすと5カ年計画にはっきり書いてある。石炭火力発電所についても日本の20倍も保有していて、毎年日本1つ分以上増やしている。
のみならず、中国は経済圏構想「一帯一路」構想の下、世界中で石炭火力発電所の建設を手掛けている。合計すると、日本全体の石炭火力発電所よりも多い。「30年を過ぎたらCO2を減らす」とか、「60年にはCO2をゼロにする」などと言っているが、新型コロナでも人権でも嘘をつき続ける国を、どうして信用できるだろうか。
環境運動家が大好きな欧州はどうか。
電気自動車は高い補助金などの優遇措置で強引に導入されているけれど、まだまだ金持ちのおもちゃだ。ドイツは石炭はもとより、原子力も風力もバイオテクノロジーも、あらゆる技術を「環境に悪い」と言って否定した結果、今頃になってロシア頼みでガスパイプラインを引いている。あれCO2減らすじゃなかったの?
「脱炭素」については、「有言不実行」が世界の標準だ。諸君、だまされて大損しない様、気を付けよう。