ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2021.09.03
本稿はワーキングペーパーです
第一次世界大戦後、日本の石炭鉱業は労働市場と政府規制の二つの面で大きな環境変化に直面した。鉱夫賃金が大戦前の3倍以上に昂騰する一方で、第1回国際労働会議への参加に伴い日本でも労働規制が強化され、特に鉱山に関しては女子と年少者からなる「保護鉱夫」の労働時間と労働条件が厳しく規制された。こうした環境変化に対応するため、石炭鉱業企業は採鉱方式の変更を前提に機械化による労働節約を進めたことが知られている。一方で複数の炭坑を経営する主要石炭鉱業企業は相対的に生産性が高い炭坑への資源の再配分を通じて平均的な生産性を引き上げることを試みた。この論文では、1930年代前半の三菱鉱業の石炭部門における企業内資源再配分とその原価・労働生産性への影響を、炭坑別データを用いて検討し、労働生産性に関する結果を他の主要企業、三井鉱山、北海道炭砿汽船と比較する。その結果、三菱鉱業における資源再配分の効果が他の2社より、絶対的な大きさでも、また各社の労働生産性上昇に対する相対的な比率の点でも大きかったことが明らかになった。
ワーキング・ペーパー(21-001J)1930年代日本の石炭鉱業における企業内資源再配分と労働生産性上昇: 三菱鉱業、三井鉱山、北海道炭砿汽船の比較分析