レポート エネルギー・環境 2021.08.31
日本の地球温暖化対策の見直すために設立された経済産業省・環境省の審議会の合同会合(第8回)が7月26日にウェブ開催されました。委員であるキヤノングローバル戦略研究所 杉山研究主幹は書面および口頭で意見を述べました。
中央環境審議会地球環境部会 中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会 地球環境小委員会地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合(第8回)
令和3年7月26日
(1)第1章第1節
2030年、2050年の数値目標はいずれも「努力目標」であることを明記すべき。具体的修正案に
ついては本稿後半の事前提出資料を参照。
(2)第1章第2節
第2節 地球温暖化対策の基本的考え方1.環境・経済・社会の統合的向上
に引き続いて、以下を挿入。
2.他の社会目標の尊重
地球温暖化対策の推進に当たっては、それが他の重要な社会目標を阻害しないようにすべきで
ある。
・国民に重い経済負担を課してはならない。CO2 をゼロにするということは石油、ガス、石炭の使
用を禁止するということであり、経済負担が甚大になる懸念があるため、これは特に重要な点であ
る。
・敵対的な独裁国家への経済、技術、資源依存を高めてはならない。我が国の領土保全・電力シ
ステムテロなどの安全保障上の懸念が増大してはならない。自由・民主などの基本的価値を犠牲
にしてはならない。
・強制労働や児童労働に関与して生産された製品を利用してはならない。とくに太陽光パネルに
ついてはその基幹部品である結晶シリコンについて現在の世界生産の半分は新疆ウイグル自治
区で行われており、わが国はこれを使用すべきではない。
・技術利用にあたってはそれが景観、騒音、生態系破壊、土砂災害、廃棄物問題などの他の環境
問題を引き起こさない様に注意が必要である。
(3)第4章第1節
第4章 地球温暖化への持続的な対応を推進するために第1節 地球温暖化対策計画の進捗管
理 の最後に、以下を挿入。
(4)政策のカーボンプライシング制度
温暖化対策計画における費用対効果を高めるために、同計画内の全ての政策について、毎年、
所要の費用と CO2 削減効果を算定し、費用対効果を CO2 トンあたり何円かで、透明性の高い方
法で算定し、報告書として公表する。その上で、この報告書は、毎年の経産省・環境省合同審議
会に提出され、検討対象となる。一定の水準(=炭素1トンあたり 4000 円)と比較して費用対効果
の著しく劣る政策については、見直す。
(4)第4章第3節
第4章 地球温暖化への持続的な対応を推進するために
第3節 推進体制の整備の最後に、以下を挿入
温暖化対策計画における費用対効果を高めるために、同計画内の全ての政策について、
毎年、所要の費用とCO2削減効果を算定し、費用対効果をCO2トンあたり何円かで、透明性
の高い方法で算定し、報告書として公表する。その上で、この報告書は、毎年の経産省・環
境省合同審議会に提出され、検討対象となる。一定の水準(=炭素1トンあたり4000円)と
比較して費用対効果の著しく劣る政策については、見直す。
(5)「はじめに」
科学的知見に関する事務局の「はじめに」の文案は問題が多く全面的な修正が必要。具体的
な修正意見については本稿後半の事前提出資料を参照。
事務局案は典型的な役人の悪文になっていて、いたずらに難解で、何を言っているか意味を取
るのが難しく、不正確で、非定量的である。のみならず、意図的に誤解をさせて、CO2 による気候
変動について殊更に不安を煽り、政府の政策を正当化するように書かれている。
また IPCC は多くある国際組織の1つに過ぎない。それがあらゆる科学的知見を代表している
訳ではない。COVID について WHO が唯一の科学的知見の情報源とするのが間違いであるのと
同様。科学的知見は多くの組織・個人に分散的に存在する。
(6)第7回会合の江守委員意見に対する回答
(本稿後半の事前提出資料を参照)
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本稿は個人の見解です。
筆者ホームページ キヤノングローバル戦略研究所