メディア掲載  エネルギー・環境  2021.08.30

「脱炭素」は嘘だらけ④(夕刊フジ連載)

夕刊フジ(2021年8月13日)に掲載

・太陽光発電は解決策ではない

・熱海土石流災害とメガソーラー

・電気代はすでに5割増し

・太陽光発電は環境に優しくない

・屋根の上にジェノサイド

小泉進次郎環境相は太陽光発電にご執心で、「脱炭素」のために大量に導入するという。だが、太陽光発電はろくなことがない。

まず高い。割高な太陽光発電を買い取るために、いま家庭の電気料金には「再生可能エネルギー賦課金」が上乗せされて徴収されている。世帯あたりだと年間1万円に達している。

しかも、これは氷山の一角だ。というのは、この賦課金は企業も負担しており、それによって諸君の給料が減ったり、物価が上がったりして、結局は家計が負担している。これは世帯あたりで、実に年5万円に上る。

普通の世帯の電気料金は月約1万円、つまり年間だと約12万円だから、1万円プラス5万円で合計6万円が太陽光発電のための追加の負担となっている。つまり太陽光発電によって、すでに諸君の電気代は事実上5割増しになっているのだ。

これだけ経済的な負担して、どれだけCO2が減っているかというと、わずか日本の2.5%しか減っていない。菅義偉政権が掲げた2030年のCO2(二酸化炭素)削減目標46%は、従来の26%から20%もの深堀りだ。これに向けて、太陽光発電の大量導入などをすれば、ますます家計への経済負担が膨らむ。

それに太陽光発電は環境に優しくない。

石炭は昔の植物の死骸で、つまりは長時間にわたり太陽光を詰めこんだ、エネルギーの塊だ。だが、太陽光発電はその瞬間の太陽光を捉えるに過ぎない。だからパネルをたくさん敷き詰めないと、経済に必要な電力は得られない。多くのパネルをつくるには材料が要るし、廃棄物もたくさん出る。

太陽光発電は「脱物質」などではなく、その逆である。広い面積を必要とするので森林が犠牲になる。山間部につくれば土砂崩れの心配もある。

さらに忘れてはならないのは、太陽光発電の世界市場を席巻している中国製品は、ウイグルの強制労働との関係の疑いが濃厚なことだ。

米国は6月に中国製太陽光パネルの輸入を禁止した。太陽光パネルの心臓部にあたる結晶シリコンは、世界の45%がウイグル地区で生産されている。残りは30%がウイグル以外の中国であり、中国は合計で75%となっている。他の国々は全て合わせても25%だ。

日本の太陽光発電パネルはいまや8割が海外製品になっており、中国製品も多い。米国並みの措置を日本も採れば、太陽光発電の導入には急ブレーキがかかり、価格高騰も避けられない。

だがそれでも、日本も断固とした措置を速やかに取るべきだ。

環境のために良かれと思った太陽光発電が強制労働を助長するのは本末転倒だ。このままでは、家の上の太陽光パネルを見るたびに、おぞましいジェノサイド(民族大量虐殺)を思い出すことになる。かかる事態を、日本政府は許すべきではない。