2021年8月、中国上海市を拠点とする上海農村商業銀行は新規株式公開(IPO)を実施し、同国内57番目の上場商業銀行となった。中国では、2010年代後半から地方銀行の上場ニーズが強まり、現在も10行以上が国内市場(上海または深セン)への上場を申請中。
ただし、近年、監督当局は金融機関のIPO実施についてやや慎重なスタンスに傾いているうえ、ここにきて投資家も今後の経済情勢や中小銀行の財務内容に対する懸念を強めており、商業銀行のIPO加速期待は後退しつつある。
IPOには、商業銀行の株主構成に変化を生じさせることが期待される面もあるが、これまでのところ、政府及び政府系機関による出資のウェイトに大きな変化はみられていない。中国政府が、今後の政策運営の中で、社会及び市場の安定維持と競争を通じた効率性向上のバランスをどのようにとっていくかが注目される。