メディア掲載  国際交流  2021.08.27

国際会議/眠気抑えオンライン参加

電気新聞「グローバルアイ」2021年8月24日掲載

対話通して相手を知る/画面越しも役割忘れず

世界中が感染症に悩まされている現在、国際会議は通常ズームなどを通じて行われている。この種の会議は出張を伴わないため、経費節減・時間節約という点で効率的だ。だが、この方法では、直接会えば感知できる相手の表情や感情の微妙な変化を見逃しかねず、総合評価としては疑問がいまだ残る。

さらなる問題は時差だ。例えば米国東部海岸の朝10時に始まる会合は、西海岸で朝7時、ロンドンで午後3時、東京では夜11時に始まる会合となる。

こうした理由から、筆者は国際会議に関して、最近は数を厳選して参加している。例えば今月初旬は、アスペン研究所主催のストラテジー・フォーラムだけに参加した。本来、この会合は米国のリゾート地であるアスペンで開催される非公開の会合だ。今回、オンラインの形で開催されたため、公開部分が一部、マスコミにより世界中に報じられた。例えば米国証券取引委員会のゲイリー・ゲンスラー委員長が暗号資産に関する見解を述べたことを耳にした方々もいると思う。
 
会合では各分野の代表的人物が見解を簡潔に述べるため、最新の優れた情報を一度にまとめて聴けるという理由から、内容・時間節約の点で有益な機会だ。

会合は2日間、日本時間で夜10時から早朝5時まで開催され、アジアの政治経済をはじめ興味深い内容にあふれており、眠気を抑えつつ参加した。

総合司会は国務次官を務め、現在ハーバード行政大学院で教えるニコラス・バーンズ教授で、最初の発言者はシンガポールのリー・シェンロン首相。次に歴史学者のニオール・ファーガソン教授が語り、その後にミシェル・フロノイ元国防次官やジュリー・ビショップ前豪外相、そして日本国際問題研究所の市川とみ子氏が発言した。
 
経済・金融分野では、アジアインフラ投資銀行の金立群行長とロバート・ゼーリック元世銀総裁の見解が印象的だった。中国人の発言は国の公式見解と変わらないため普通期待できないが、金行長は例外的で流ちょうな英語で厳しい質問にも答えていて好感が持てた。筆者はメールで友人に次のように伝えた。「金氏は英語の達人で、チャーナウ氏の名著『モルガン家 金融帝国の盛衰』を中国語に訳した人だ。同書は激動の1930年代、欧米の金融界が中国の金融界よりも、日本の井上準之助を信用していたことを記している。この中国にとって苦い過去の教訓を知る金氏は、外国が抱く不信感に巧みな英語で対応するだろう」

安全保障分野に関しては、インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官やサイバー分野の専門家であるアン・ノイバーガー国家安全保障担当副補佐官の見解が参考になった。またハーバード大学のジョセフ・ナイ教授の司会による討論会では、中国専門家のスーザン・シャーク教授やマット・ポッティンジャー元国家安全保障担当副補佐官の発言に聞きほれていた。

ナイ教授は会合と同時期に小論を著し、「過小評価は驕慢を生み、過大評価は恐怖を生む」と語り、対話を通じて相手を正確に知ることの重要性を強調した。

混迷のコロナ禍の下、我々は相手の意図を見誤らないよう、国際会議の役割を忘れてはならないのだ。