メディア掲載  エネルギー・環境  2021.08.16

「脱炭素」は嘘だらけ③(夕刊フジ連載)

夕刊フジ(2021年8月13日)に掲載

エネルギー・環境

・日本の自滅で中国は高笑い

・「脱炭素」は自由諸国を害し中国を利す

・普遍的価値を守り、国民や領土を守るには国力が必要

菅義偉政権は、日本は2050年にCO2(二酸化炭素)をゼロ、つまり「脱炭素」すると宣言した。30年までには13年比でCO2を46%削減するとした。これは無謀な目標で、実現しようとすれば消費税倍増に匹敵する経済負担が生じることと初回に述べた。

ジョー・バイデン米政権や、EU(欧州連合)もいま日本と同様に「脱炭素」に熱心だが、いくら先進国がCO2を減らしても無駄である。先進7カ国(G7)の合計よりも中国のCO2の方がすでに多いからだ。

その中国は今後どうするかというと、20年から5年間でCO2を1割増やす計画だ。中国のCO2は日本の10倍なので、5年間の増分だけで日本丸々1つ分のCO2を増やす訳だ。

つまり日本が「脱炭素」で経済的な自滅をする一方で、中国はCO2に制約されず経済成長して、ますます強大になる。これで果たして日本国民の生命や財産、領土・領海・領空を守ることができるのか、甚だ心配だ。

さらに愚かなことに、日本は「脱炭素」の過程で、ますます「中国依存」を深めることになる。

いま日本の太陽光発電パネルの8割は輸入であり、その多くを中国製が占める。電気自動車の生産に必要なネオジムなどの希少金属も、中国および中国企業が世界の生産の7割を占める。このため、30年の目標達成のため、慌てて太陽光発電や電気自動車を導入しようとすると、日本経済への中国支配がますます強まる。

すでに中国は日本国内の言論や政治に影響を及ぼしているが、いよいよ日本の自由が危機を迎えるかもしれない。

中国はCO2排出の多い石炭を大量に使用して、安価な電力を供給し、鉄鋼やセメントを生産している。これによって道路、ビル、工場などのインフラを建設している。太陽光発電パネルや電気自動車用のバッテリーも、石炭を大量に利用した結果として安価に製造され、世界中に輸出されている。

日本ではCO2を排出するから石炭の使用を止めるべきだという意見がある。だが、日本の石炭火力発電所はすべて合計しても約5000万キロワットだが、中国はこれを上回る石炭火力をわずか1年で建設している。日本がCO2を理由に安価で安定した発電方式である石炭火力を減らすのはバカげている。

同じく、石炭を使用する粗鋼製造では、中国の生産量は日本の10倍以上もある。のみならず、日本の製鉄業は年々空洞化している。製鉄業は製造業の基幹であり、その空洞化に拍車を掛けてCO2を減らすのは、全くの愚策だ。

日本は中国と対峙(たいじ)している。「自由」「民主」「人権」「法の支配」といった普遍的価値を守り、領土を保全するためには、経済力を含めた総合的な国力が必要だ。このためには、「脱炭素」などという無謀な目標を追い求めることを止め、石炭火力や製鉄業は堅持すべきだ。