要旨
日本は固定価格買取制度によって再生可能エネルギーの大量導入政策をとってきた。この費用対効果を分析する。2019年現在、同制度のもとで再生可能エネルギー発電促進賦課金として年間2.4兆円が徴収されている。他方で同制度による2019年現在のCO2の排出削減量は日本の温室効果ガスの2.48%である。したがって、おおむね1%のCO2削減のために1兆円がかかっている計算になる。
1 試算の流れ
固定価格買取制度はどれだけ費用がかかり、どれだけのCO2削減効果があったか見積もる。
まず賦課金は図1のようになっている。年間2.4兆円に上っている。
図1 再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移。資源エネルギー庁による。
そして固定価格買取制度のもとで大幅に発電設備容量が増加した。
図2 固定価格買取制度による太陽光発電等の導入量。資源エネルギー庁による。
以下、表1にそって、固定価格買取制度によるCO2削減効果を計算する。
表1 計算のまとめ。詳しくは本文を参照。
2012年から2019年までの再エネ発電量の増加を全て固定価格買取制度によるものとみなそう。発電電力量は図3にようになっている。
図3 発電電力量の推移。令和元年度(2019年度)におけるエネルギー需給実績(確報)
図3から、2012年から2019年までの再エネ(水力、太陽光、風力、地熱、バイオマス)発電電力量の増分は778億kWhで、これは2019年の発電電力量の7.60%を占めていたことが分かる。
もしもこの再生可能エネルギーの導入がなければ他の発電が比例的に増えていたと考えると、固定価格買取制度は発電部門のCO2を7.60%だけ削減したことになる。
それではこれは日本の温室効果ガス排出量をどれだけ減らしたのだろうか。
日本の温室効果ガス排出量は2019年に12.12億トンだったことが次の資料から分かる:
国立環境研究所 2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210413/20210413.html
これに対して、発電部門のCO2排出量は3.96億トンで、日本の温室効果ガス排出量の32.6%だった(表2)。
表2 国立環境研究所 日本の温室効果ガス排出量データ(部分)
以上から、固定価格買取制度によるCO2削減量は、日本全体の温室効果ガス排出量のうち7.60%×32.6%=2.48%だった、という計算になる。
2.4兆円の賦課金で2.48%のCO2削減なので、1%の削減あたり約1兆円がかかっている、と言う計算になる。
以上