WTO加盟後の約20年で、中国の銀行業金融機関は目覚ましい発展を遂げた。しかし、近年、一部ではあるが、不良債権の増大、さらには経営危機の問題など、金融リスクが顕現化しつつある。2010年代半ば以降に取り組んできた金融監督体制の整備をさらに浸透させるとともに、影響力を持つ主要株主のあり方を見直す必要性が高まっている。
WTO加盟が促した改革
2001年12月、中国は銀行市場を全面的に対外開放する約束とともに、世界貿易機関(WTO)に加盟した。約束の履行には5年の猶予期間があったものの、当時の中国にとって、それは大きな打撃となり得るものであった。1990年代の経済過熱などの影響で、同国の銀行業金融機関は経営基盤をかなり毀損しており、強大な外国銀行と競争するためには抜本的な改革が必要と考えられていた。
中国の銀行業金融機関を巡る問題は90年代後半から深刻化していたが、その要因が複雑に絡み合っていたため、同国政府は効果的な解決策をなかなか打ち出せずにいた。同国のWTO加盟は、国内で広く危機感を共有させ、それが痛みを伴う改革を遂行するエネルギーになった面がある。
2002年の全国金融工作会議で銀行セクターを抜本的に改革する必要性が確認され、その後、①監督体制の整備(監督に特化した銀行業監督管理委員会の開設)、②中央銀行法および商業銀行法の改正、③国有商業銀行の株式制移行と株式上場、④小規模金融機関の再編、など多岐にわたる措置が実行に移された。改革は時間をかけて段階的に進められ、これまでに大きな成果を挙げている。