メディア掲載  国際交流  2021.06.22

【中国】変貌する外交イメージ

電気新聞「グローバルアイ」2021年6月15日掲載

国際政治・外交 中国

絶えず最新情勢を把握/関わり方の戦略磨く時

よかれあしかれ我々はイメージに左右される。元来イメージとは確からしさを持っているわけではない。イメージはつかみがたく、虚像と実像の両面を常に持っている。このため我々は風評や既成概念にだまされずイメージの“虚”と“実”とを取り違えないように行動しなくてはならない。

今月2日早朝、一瞬目を疑うような情報が電子版中国『人民日報』に現れた。習近平主席が、世界から好感を抱かれるよう幹部に指示したらしい。すなわち開放的で自信に満ちながらも、謙遜して親しみを抱かれるような態度を示し、信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージを形作るよう指示したというのだ。各国の報道機関はこの事を直ちに配信したが、中国が近年の外交姿勢(戦狼外交)を改めるとは…、と筆者は驚いてしまった。

米国UPIは当然のごとく“難しい注文”と冷たくあしらっている。翌3日、ホワイトハウスは米国とその同盟国の安全保障と価値観の保持のために中国企業への投資禁止措置に関する大統領令を公表した。

その直後の7日夜、中国の新華社が、外国に対する報復に関する「反外国制裁法案」を全国人民代表大会(全人代)常務委員会が審議した事を伝えた。


どの国の外交にも硬軟両面が必要だが、中国外交に対するイメージはこのように激しく揺れ動いた。そして今、中国のイメージは愛くるしいパンダから遠のき、牙をむく巨大なドラゴンの様相を強めている。

特に米中間対立が一段と激しくなる中、我々は両国に対するイメージを正確に捉え、両国と付き合う知恵を磨くべき時期を迎えている。これに関し、日本の優れた外交官の一人である兼原信克氏は「日本企業は、おそらく初めて安全保障問題と経済問題の交差する部分で悩むことになる」と近著『安全保障戦略』の中で警告している。

日本国内の情報だけに頼らず、米中に加えて両国と深い関係を持つ国の人々と双方向の情報交換を行う必要がある。時には現地を訪れ、情勢把握を断続的に行わなくてはならない。換言すれば「百聞は一見に如かず」であり、さらには「千聞は百聞に如かず」「百見は一見に如かず」なのだ。


コロナ禍のため、残念なことに昨年から海外との情報交換は全てネットを利用したものになっている。筆者が最後に訪れた所は、2019年年末のパリだ。ある日、シャンゼリゼ通り沿いのホテルで朝食を取っていると、見知らぬ紳士が近づいて来て、英語で「失礼ですが、中国の方ですか」と尋ねた。筆者は直ちに「いいえ日本人です」とフランス語で答えた次第だ。

欧米にいると、一昔前は東洋人といえば日本人だった。だが今は、現地の人々が抱く東洋人に対する“脳内イメージ”は中国人となっている。ただ中国人に対するイメージと言っても、台湾人に加え欧米やアジア諸国の国籍を持つ華僑も含めて中華系全体で見れば、そのイメージは極めてあやふやなものである。

一方で、日本に対する外国のイメージが希薄化しあいまいになっていることを痛感して、情報発信の重要性を再認識した次第だ。かくして正確な情勢把握と適確な状況判断のため、従来のイメージを再点検している毎日だ。