地球温暖化に関わる多くの研究者は、太陽活動はほぼ一定であり、地球の気候の変動に大きな影響はない、と想定している。気候モデルによる将来の温暖化予測もそのような前提に依拠している。
しかし、太陽活動の変化が間違いなく気候に大きく影響している、とする論文が3年前に発表されており、現在進行中のラニーニャ現象がそれを裏付けている(論文、解説記事)。
太陽活動には約11年の周期がある。活動が強い時期は黒点が増え、弱い時期には黒点が減る。これが図の上半分に示されている。
他方で、地球の気候には「エルニーニョ南方振動(ENSO)」が大きく関わっている。これは、エルニーニョからラニーニャへ、またその逆、と繰り返す振動である。エルニーニョとは、太平洋のチリ沖の海面水温が高い状態で、ラニーニャはその逆になる。いくつかの指数があるが、ここでは米国気象庁のものを用いている。この指数が図の下半分に示されている。
プラスがエルニーニョで、赤で示されている。マイナスはラニーニャで、青で示されている。赤と青のボックスは、繰り返しパターンでエルニーニョとラニーニャの期間を示している。この図は論文を基に作成されたもので、出典はhttps://wattsupwiththat.com/2018/07/05/solar-minimum-and-enso-prediction/。
さて図を見ると、太陽活動周期が終わるとき、即ち黒点数が極小になるとき、その前はラニーニャ(青)、後はエルニーニョ(赤)になり、やがて黒点数が上昇に向かうとラニーニャ(青)になる、というパターンが過去に5度繰り返されていることが分かる。
最後の太陽周期は2020年に終わったとされるが、その後のいま、まさにラニーニャ現象が起きていて、これが地球規模の気温低下を引き起こしていることは前回述べた。
論文の著者であるメリーランド大学のロバート・リーモンは、この相関は偶然ではない、とする。統計的検定によれば、調査に含まれる5つの太陽周期の終了の全てが海水温の変化とランダムに一致する確率は5,000回に1回以下だ、という。
なおこの図は2018年に書かれたものだが、6番目の太陽周期の終了後の、新しい太陽周期の開始に伴うラニーニャを予言し、これが見事に当たった訳だ。このため、偶然の一致だった可能性はさらに低くなる。
太陽と地球の間のどのような物理過程が、この相関の原因であるかは、よく分かっていない。論文の著者は、太陽磁場の変動による宇宙線への影響を含む、さらなる研究を必要だとしている。物理過程に関するさまざまな仮説の現状についてはスベンスマルクがまとめている。