人工衛星からの観測によると、2021年の3月に世界の気温は劇的に低下した。
報告したのは、アラバマ大学のグループ。元NASAで、人工衛星による気温観測の権威であるロイ・スペンサーが紹介記事を書いている。
https://www.drroyspencer.com/2021/04/uah-global-temperature-update-for-march-2021-0-01-deg-c/
図の縦軸は1991年から2020年までの平均をゼロとした気温偏差である。青丸が毎月の観測値、赤い線は前後13カ月の移動平均である。気温測定の対象は地球全体の対流圏下部(LT)。これは地上から高度9000m付近までの大気のことを指す。
2021年3月の気温偏差は-0.01度だった。つまり地球の気温は1991年から2020年までの平均にほぼ戻ったということだ。
これは2021年2月の値+0.20度からの大幅な低下だった
この大幅な低下は、進行中のラニーニャ現象の影響によると見られている。これまでエルニーニョ現象で高い気温が続いていたのが一気に反転した。
地球全体ではなく、局所的な低温も観察されている。
世界全体の海洋上空の対流圏の気温偏差は-0.07度となり、これは2013年11月以来の最低値である。
熱帯(北緯20度から南緯20度まで)の平均からの気温偏差は、-0.29℃であり、2012年6月以来最も涼しい。オーストラリアの対流圏の気温偏差は-0.79℃であり、2014年8月以来最も涼しい。
今後、この傾向が定着して地球全体の気温は低いまま推移するのか、それとも上昇に転じるのか。今年末のCOP26まで続くようだと、温暖化に関する国際政治にも影響を与えるだろう。引き続き注目されるところである。