レポート  エネルギー・環境  2021.05.26

「政策のカーボンプライシング」実施について- 経産省・環境省合同会合(第6回)におけるキヤノングローバル戦略研究所 杉山研究主幹委員意見

日本の地球温暖化対策の見直すために設立された経済産業省・環境省の審議会の合同会合(第6回)が5月14日にウェブ開催されました。委員であるキヤノングローバル戦略研究所 杉山研究主幹は書面および口頭で意見を述べました。

エネルギー・環境

1. ワーキンググループの概要および資料:


中央環境審議会地球環境部会 中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会 地球環境小委員会地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合(第6回)
令和3年5月14日



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.杉山研究主幹口頭意見

1.温暖化対策にかかる総額について、政府は明確にするべきだ。

・再エネ全量買い取り制度の実績を参考にすると、約3%のCO2削減のために毎年約3兆円の賦課金が徴収されており、1%CO2削減のために毎年1兆円程度の費用がかかっている。

・26%から46%まで深堀りするとなると、その差は20%である。単純に計算しても、 追加で毎年20兆円の費用がかかることになる。人口1億人とすれば、追加で毎年1人20万円、4人家族世帯であれば80万円となる。莫大な負担になる

・総額でどの程度の費用がかかるのか、政府は明確にして国民に示すべきである。


.「政策のカーボンプライシング」を実施すべきである

・費用の高騰を防ぐための制度設計として、「政策のカーボンプライシング」を提案する。

・すべての政策について、実施前、実施中、実施後に、何円の費用で何トンのCO2が削減 できるか計算し、毎年レビューすべきである。

・そのさい、一定の「炭素価格」を設定し、政策を合理化する指針にすべきである。

2017年の地球温暖化対策プラットフォーム報告書では、日本の温暖化対策費用は、すでに1トンあたり4000円を超えている。

・以下を提案する: 炭素価格を1トンあたり例えば4000円と設定する。政策は全てこの炭素価格を用いて費用対効果を分析し、それを参考として、安全保障なども考慮しつつ、 政策実施の可否を決める。


.Jクレジット等について

・「日本の製造業が海外IT企業などのサプライチェーンに生き残るためには、日本は再エネの比率を上げなければいけない」という意見があるが、原子力が再稼働すれば日本は EU・ 米国と比べてゼロエミッション電源が不足しているわけではない。重要なことはCO2のクレジットやゼロエミ電力を必要とする企業が安価に購入できる制度を作ることである。 性急な再エネ大量導入はコストアップになり企業の競争力を削ぐ。(添付3 実はゼロエミ 電源が有り余っている日本 強引な再エネ大量導入は有害無益)


.災害についての統計データについて

・災害に関する統計データの整理と分析を事務局は体系的に実施して本会合に提出すべきである。そして、それをベースとして本会合で議論すべきである。挙証責任は、国民に多大な負担を課する温暖化対策を実施しようとする事務局側にある。以上は第1回会合から毎 回意見し両座長の賛同も得ているが未だ実現していない。事務局に次回会合までの資料提 出を求める。


.45会合での江守委員資料に関して

・詳細は添付1,2をご覧ください。以下はポイントのみです。

 A) 降水量の変化について。江守委員は 1975 年以降という短い期間を切り取って大きなトレンドを見出し、それが地球温暖化の影響であるかのように説明しています。しかしこのような短い期間のデータからかかる結論を出すことは、誤りです。

 B) 台風について。江守委員意見には「東京への接近数が増えている」とありますが、まず 第1に、論文では地球温暖化との因果関係ははっきりしない、と結論してあります。第2に、もっと重要なことですが、接近数が増えているのは過去 40年間です。これは長期的なトレンドを読み取るには短すぎます。実際のところ、1950年以降という長期間 で見ると、東京へ接近する台風は増えていません。この論文を根拠にして「東京への接 近数が増えている」として、それをあたかも地球温暖化の影響であるかのように言うのは、誤りです。

 C) 気候モデルの気温上昇について。気候モデルシミュレーションの大半が過去の気温上 昇を過大評価していることは、厳密な統計分析の結果として指摘されています。

 D) 気候モデルのチューニングについて。モデルではチューニングという習慣が広範に存在します。そこでは気候感度などの出力結果を見ながら雲のパラメータなどを操作し ています。いまや気候モデルは多大な経済負担を伴う温暖化対策を実施すべきか否かを検討するために使われているのですから、民主的な意思決定に資するため、モデルはブラックボックスであることを止め、チューニングをどのように行っているが、その過程をくわしく記述して、透明性を高くすべきです。このようなモデルのチューニングについての情報を整理分析しこの合同会合に資料提出することを、事務局に要請します。


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1本稿は個人の見解です。
筆者ホームページ キヤノングローバル戦略研究所

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杉山研究主幹 書面意見