ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2021.05.21

ワーキング・ペーパー(21-002E)The Impact of Technological Change on Labor and Wage: The Japanese Silk Weaving Industry during the Industrial Revolution

本稿はワーキング・ペーパーです

経済理論

産業革命が人々の労働に与えた影響は、長く経済史研究者および経済学者の関心を惹いてきた。さらに近年の急速な技術革新と労働市場の変化は、あらためてこの問題への関心を呼び起こしている。産業革命に関して、技術変化が労働者の技能の意味を失わせ賃金を低下させたという見方が広く受け入れられている。本論文では、20世紀初めの日本の絹織物業の分析を通じて、この見方を再検討する。当時の日本の絹織物業には力織機が急速に普及した。力織機は18世紀末~19世紀初めのイギリスにおける産業革命においても主要な役割を担った技術である。力織機の導入によって、それまで手織工が行っていた仕事のうち、定型的な(routine)ものが機械に代替され、その結果、労働者には非定型的(non-routine)な仕事が残された。この論文ではAutor et.al.(2003)のモデルと新たに構築したプラントレベルのパネルデータを用いて、力織機化が上のような仕事の構成変化を通じて賃金に与えた影響を検討し、力織機化が基幹的な労働者の賃金にプラスの影響を与えたことを明らかにした。この結果は、産業革命下の技術変化が労働者の技能の意味を失わせ、賃金を低下させたという見方に修正を迫るのものである。

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The Impact of Technological Change on Labor and Wage: The Japanese Silk Weaving Industry during the Industrial Revolution