論文  グローバルエコノミー  2021.04.20

WTO 加盟後 20 年の中国銀行セクターの変化: 多様化した金融サービスと監督体制の再構築

中国経済 中国

要旨

〇 WTO加盟後約20年間の中国の銀行制度改革は、金融技術面の発展と相俟って、金融機関とそのサービスを多様化させ、経済と社会が求める資金を潤沢に供給した。

〇 ただし、改革は道半ばであり、金融機関のガバナンス・メカニズムや金融当局のモニタリング体制には改善の課題が残っている。また、金融サービスの利用者は、政府や金融機関による「暗黙の保証」を前提にリスクを想定することが多い。近年、経済成長の陰に隠れていた金融リスクが顕現化しつつあり、リスク管理体制の再構築が急がれている。

〇 201617年は、デレバレッジが同国経済政策の最優先課題とされ、国有企業及び地方政府関連債務の削減が試みられたが、マクロベースの債務率は低下していない。

〇 201920年に実施された中規模商業銀行の救済では、預金保険基金や中央・地方政府管下の資産管理公司などが活用され、今後も同様の手法を採り得ることが確認された。中国政府は、当面は、経済・社会の安定を優先し、金融機関の破産を極力回避する方針か。

〇 近年、シャドーバンキング、金融持株会、フィンテックなどについて、法律や監督体制の整備が進んでいる。今後の課題は、関連組織のキャパシティビルディングであろう。

〇 中国内の過度の信用拡張に伴うリスクを適切に管理するために、監督メカニズムの整備が急務である中で、政府の対応が金融サービスの提供者や利用者を委縮、硬直化させることがないよう、金融当局と市場との対話が益々重要になっている。

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