レポート エネルギー・環境 2021.04.20
日本の地球温暖化対策の見直すために設立された経済産業省・環境省の審議会の合同会合(第4回)が4月9日にウェブ開催されました。委員であるキヤノングローバル戦略研究所 杉山研究主幹は書面および口頭で意見を述べました。
1. ワーキンググループの概要および資料:
中央環境審議会地球環境部会 中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会 地球環境小委員会地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合(第4回)
令和3年4月9日
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/004.html
出典:経済産業省ウェブサイト
2.杉山研究主幹口頭意見
1. 2050年カーボンニュートラルの「目指し方」について
今回政府よりプレゼンのあった農業、フロン、プラスチックリサイクルの何れも、2050年カーボンニュートラルを経済的に実現する技術は現時点で存在しません。このため、強引に部門別に2050年カーボンニュートラルを目指すと、産業として立ち行かなくなり、国民負担は莫大なものに上ります。未熟な技術は性急に導入拡大をするのではなく、基礎的な研究開発に留めるべきです。
「2050年カーボンニュートラル」を日本全体で目指すにあたっては、部門別に達成を目指す必要は無く、国内で全てを達成する必要もありません。
カーボンニュートラルは「日本発の技術によって世界全体でCO2を削減することで達成する」こと、具体的には原子力・クリーンコール・直接空気回収(DAC)等を始めとした技術開発を進めることで目指すべきです。
2. カーボンニュートラルのコスト抑制について
農業、フロン、リサイクルについてカーボンニュートラルを目指した結果としてコストが上昇すると以下の惧れがあります:
このような事態を招かないように、制度上の工夫が必要です。今回の政府資料でもコストについての記述が殆ど無いことは不適切です。
3. プラスチックリサイクルについて
リサイクルにはコストがかかることに鑑みて、経済合理的な廃棄物処理行政をすべきです。リサイクルは手段であって目的ではありません。ごみの焼却や埋め立てといった手段も維持する必要があります。日本の政府方針はそのようになっていると理解しております。
4. 科学的知見はカーボンニュートラルという極端な政策を支持しない
これまでこの合同会合で3回にわたって提出した意見の繰り返しになりますが、カーボンニュートラルという極端な目標を目指すことを正当化するほどの科学的知見が本当にあるのか、事務局はきちんとまとめて示すべきです。
以下は、以前提出した資料と一部重複もあるが、改めて記しておきます。(なお詳しい議 論は拙著「地球温暖化のファクトフルネス」 電子版(99 円)/ 印刷版(2,228 円)をご覧願います)。
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1本稿は個人の見解です。
筆者ホームページ キヤノングローバル戦略研究所
https://cigs.canon/fellows/taishi_sugiyama.html