メディア掲載  グローバルエコノミー  2021.03.15

コロナ対策の1年を振り返る

共同通信より配信

新型コロナウイルス

日本で新型コロナウィルスが検知されてから1年が経過した。わずか1年であるが、この間の世界の変化を思うと、文字通り隔世の感がある。昨年春以来、日本政府はさまざまな対策を講じて来た。これを振り返ると、初めての事態への対応としてやむを得ない面もあるとはいえ、大きな問題を指摘せざるを得ない。

論点を感染症対策と経済対策の関係に絞ると、政府は昨年の早い時期からこれら2つの「両立」を強調してきた。しかし、感染が人の接触や移動によって生じる以上、両者の間には「トレードオフ」、すなわち、一方が改善すればもう一方は悪化するという関係が存在する。したがって、感染症の改善と経済の改善の2つの目的を志向する場合、このトレードオフ関係を明確に認識し、それを施策に反映させることが肝要となる。

「両立」のために望ましいのは、トレードオフ関係自体をよい方向に動かす、すなわち同じ経済活動の水準で感染症がより少ない状態にする施策である。これには、ワクチン接種による集団免疫の形成、マスク・手洗い・換気の励行といった基本的感染症対策、テレワークの拡大等の働き方の変更等が含まれる。

他方、トレードオフ関係を前提とした施策としては、経済への負の影響を伴う感染症対策である飲食店等への休業要請、逆に感染症を悪化させる経済対策であるGo toトラベル事業などがある。

Go toトラベルに関しては、昨年12月、政府はこの施策が感染症を悪化させる「エビデンスがない」として継続に固執したが、感染が拡大する中、結局中止に追い込まれた。さらに、年初には緊急事態宣言によって外出・移動の自粛を要請するという正反対の対応に転換した。

トレードオフ関係を前提とする施策については、それが感染症と経済の双方に与えるプラスとマイナスの効果を事前に注意深く比較考量する必要がある。