◇ 20年4Qの実質GDP成長率は、前年比+6.5%と回復傾向が持続(2Q同+4.9%)。消費の寄与度の改善が主因ながら、外需が予想外の高い伸びで成長率を押し上げた。
◇ 通年では同+2.3%と1978年以来最も低い伸び率となったが、日米EUがすべて大幅マイナス成長である中で中国が唯一プラス成長を達成したことは際立っている。
◇ 輸出は他国生産代替分に加え、米国向けが4Q前年比+34.3%と高い伸びを示した。トランプ政権の最終局面において米中両国経済の強い相互依存関係が確認された。
◇ 投資は、中国政府のコロナ感染拡大制御能力に対して自信を深めた民間企業が設備投資姿勢を積極化させたほか、不動産投資の伸びが一段と高まった。
◇ 投資のうち、インフラ建設投資の伸び率は予想外に低かった。その要因は、第1に、経済誘発効果の低い案件が政府の審査により排除されていること、第2に、地方政府の成長率引上げに対するインセンティブが低下したこと、第3に、マクロ経済が順調な回復傾向にあるため景気刺激策をさらに強化する必要が乏しいことなどである。
◇ 消費も政府のコロナ制御能力に対する信頼の広がりを背景にサービス消費が回復傾向をたどったこともあって、11月までは順調な回復傾向を辿っていた。しかし、12月は一部地域でのコロナ感染拡大等を背景に伸び率がやや鈍化した。
◇ 21年の実質GDP成長率は8~9%との見方が大勢。四半期ベースでは、昨年1Qをボトムに急回復したことの反動が生じるため、期を追って伸び率が低下する見通し。
◇ 対中投資に積極的な日本企業では、中国を欧米と並ぶコア市場として位置づけ、全社の意識を変えて中国市場の開拓に一段と本腰を入れるため、中国現地での研究開発拠点設立、現地への権限移譲拡大など新たな動きが4Q以降目立ち始めている。
◇ 欧米ライバル企業等の中国での積極姿勢を実感している日本企業の中国現地駐在責任者は、自社の対応の鈍さ、本社経営層との認識ギャップへの危機感を強めている。圧倒的なスピードで変化する市場ニーズを日本から実感することができていないうえ、メディアも中国市場の実態を報道しない状況では打開策が見つからないのが実情。
◇ 日本企業本社サイドの対中投資に対するネガティブなバイアスの要因としては米中摩擦の影響を懸念する社外取締役等の慎重論の増加が指摘されている。しかし、実際はファーウェイ以外の中国企業との取引等で支障が生じた事例は見られていない由。