メディア掲載  グローバルエコノミー  2021.01.19

2020年ベスト経済学書 Best2 先端的なテーマを分かりやすく伝える 経済学を味わう

週刊ダイヤモンド 新年合併特大号(2020.2021 12/26・1/2)に掲載

経済理論

経済学を味わう 東大1、2年生に大人気の授業

市村 英彦、 岡崎 哲二、 佐藤 泰裕、 松井 彰彦 編
出版社 日本評論社
ISBN 978-4-535-55955-4
価格 本体1,800円+税
発行 2020年4月初版

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この本は東京大学での授業を基にして書かれた本だ。その授業名は「現代経済理論」。駒場キャンパスの教養学部の1・2年生向けの授業で、対象は経済学部に進学する学生だけではなくて、理科系も含めた全ての学生だ。

この授業は、2019年度に始めた。なぜ始めたのか。

東大は、教養学部2年間、そして専門の学部2年間という仕組みになっている。専門を勉強する期間が2年と短い。その上3年生になって経済学部に入ったときには、学生の視野に就職が入ってきて、落ち着いて経済学を勉強する期間があまりないと考えていた。1・2年生の教養学部の時から経済学を勉強してほしかった。

また、2年生の後期に経済学の授業はあるのだが、進む専門の学部が決まる夏以降のため、経済学部に進む学生だけが受ける授業になっている。幅広い学生に経済学の面白さを分かってもらい、経済学部に行ってみようと思ってもらうことが十分にできていない状態にあった。それで前期に1・2年生対象の授業をつくろうということになった。

いざ始めると、多くの学生が授業を受けてくれた。19年度は500人前後、20年度に至っては約1000人だ。

経済学の入門編というと、教科書に書いてある初等的なことを話すのが、オーソドックスなやり方だと思うが、この授業ではあえて先端的なテーマを分かりやすく話すことを心掛けた。かなり面白いものになったと自負している。少しでも多くの人に読んで経済学に興味を持ってもらいたいと考え、書籍化したのが本書である。

本にするに当たっては、取り上げたそれぞれの項目をさらに勉強していくための参考文献を章ごとに追加した。

また、授業では話さなかった点だが、この本を読んだ後経済学を勉強していくにはどうしたらいいかをあとがきに記した。

本書を読むに当たってはどの章から読んでも差し支えない。最初の方に理論的な章があって、後の方に実証的な章、応用的な章があるが、理論篇を読んでからでないと実証的な章が理解できないという構成にはなっていない。

経済学部を卒業されたビジネスマンの方の多くは、教科書的な経済学を理解されているのではと思う。そういう方に、大学を卒業した後経済学はこんなに発展して、面白いことが分かってきているといったことをこの本を通じて知ってほしい。

ミクロデータを計量経済学の手法を使って分析し因果関係を特定していく実証研究が、ここ20年ほどで著しく発展している。4番目の実証ミクロ経済学、5番目の計量経済学、9番目の開発経済学、10番目の経済史を読んでいただけると、そういったことを実感してもらえるのではないか。(談)




推薦の言葉
●東京大学での1・2年生対象の経済学の大人気授業を書籍化したものである。第一線の研究者たちが、東大の教養学部から各専門学部への進学の際に、優秀な学生に経済学部に来てもらうという目的を持って、全力で経済学の魅力を伝えている(大竹文雄・大阪大学教授)
●現代の経済学が取り扱うトピック、分析方法が網羅的に取り上げられており、経済学を初めて学ぶ者に強い関心を抱かせる。経済学を教える教員にも「このような授業をしてみたい」と思わせる魅力がある(高橋 塁・東海大学准教授)
●最近の経済学のトレンドが分かる。マクロ経済学が1章のみで、ほぼ全部の章で実証分析に触れていることが時流を表している(蓮見 亮・武蔵大学准教授)