○ 20 年 3Q の実質 GDP 成長率は、前年比+4.9%と回復傾向が持続(2Q 同+3.2%)。外需、投資、消費のすべてのコンポーネントの寄与度がプラスとなった。
〇 外需については、多くの国々がコロナの影響により生産の回復が遅れ、中国企業に生産を委託したことから、他国の輸出を代替する形で幅広い品目の輸出が増加した
〇 投資は、中国政府のコロナ感染拡大制御能力に対して自信を深めた民間企業が設備投資姿勢を積極化させたほか、不動産投資の伸びが一段と高まった。
〇 投資のうち、インフラ建設投資の伸び率は予想外に低かった。その要因は、第 1 に、経済誘発効果の低い案件が排除されるようになったこと、第 2 に、地方政府の成長率引上げに対するインセンティブが低下したこと、第 3 に、経済が順調な回復傾向にあるため中央政府が景気刺激策をさらに強化する必要がなかったことである。
〇 消費はコロナ感染予防のための各種規制が徐々に緩和されたことに伴い、売上げが大幅に落ち込んでいた飲食、旅行、小売等を中心にサービス業の回復が進展した。
〇 5~7 月にかけてコロナ感染のクラスターが北京など数か所で発生したが、いずれのケースにおいても短期間で封じ込めに成功した。その実績が中国企業および消費者の間に、「中国はコロナ感染拡大のリスクが過ぎ去った」という自信を与えた。このコロナ制御の成功が輸出、民間設備投資、消費等経済全般の回復を通じて新規雇用の
創出にもつながり、本年前半において強く懸念されていた雇用問題も状況が好転した。
〇 日本政府は本年 4 月、海外生産拠点の国内回帰に対する補助金付与を発表した。これに応募した企業が多かったため、日本企業の対中投資姿勢は慎重化しているとの見方が広がったが、これは事実誤認である。日系メガバンクの幹部は、この政策の影響で対中投資姿勢を変えた日本企業はほぼ皆無であると述べている。
〇 中国に進出済みの日本企業はその 9 割以上が引き続き積極的な投資姿勢を保持している。しかし、日本企業の一部では業績を保つことが徐々に厳しくなりつつある。中国地場企業の中でも優秀な技術者が徐々に育ち、日本企業の技術水準に肩を並べる企業が現れ始めていることから、市場競争が厳しさを増し、部品納入価格の引き下げを余儀なくされているためである。
中国経済は新型コロナの感染拡大制御の成功を背景に回復持続 ~日本政府の国内回帰促進策により対中投資方針を見直す日本企業はほぼ皆無~