メディア掲載  グローバルエコノミー  2020.11.20

東京大学で進展しつつある組織改革

共同通信より配信

9月30日に東京大学で各部局(学部、研究所等)の教授会メンバー全員による次期総長候補に関する投票(「意向投票」)が行われ、その結果を踏まえて総長選考会議で生産技術研究の藤井輝夫教授が来年4月からの総長予定者に決定された。

これは現在の五神真総長の6年間の任期が来年3月に満了することにともなうものである。任期中に五神総長は強いリーダーシップを発揮して多くの改革を実行した。その一つに学内の予算配分の仕組みがある。従来、学内の予算が各部局にどのように配分されているかは当該部局以外には明らかではなく、また配分のプロセスも透明性をもたなかった。これに対して、必ずしも金額は大きくないが、一定の予算枠を確保したうえで、それを各部局が提案する新規事業に対して競争的に配分する仕組みが導入された。配分は大学役員と各部局から選ばれた教員が構成する委員会の定量的評価に基づいて行われる。私の数年間の経験では、各委員の評価のバラツキは意外なほど小さく、すぐれた事業に予算が配分されており、このシステムはよく機能している。

もう一つの重要な改革は、人事・給与に柔軟性を加えた点である。すぐれた研究者人材をめぐる国際競争が激しさを増す中、国家公務員の給与制度をベースとした従来の国立大学の給与では、トップクラスの国際競争力を持つ研究者人材を確保することが難しくなっている。私はこの点を長年来経済学部の同僚と学内外に訴えてきたが、さまざまなハードルがあって難航していた。しかし五神総長の下、卓越した研究者を海外から特別な処遇で招聘することが可能になり、その成果として経済学部ではすでに2人のすぐれた同僚をスタンフォード大学から迎えることができた。

藤井新総長の下でこうした改革がさらに前進し、東京大学の世界の地の拠点として発展を続けることを期待している。