ワーキングペーパー  エネルギー・環境  2020.11.06

【研究ノート】猛暑と豪雨のイベントアトリビューション研究について

エネルギー・環境

要旨

第6次エネルギー基本計画の検討が始まった。政府資料では「地球温暖化を考慮しなければ、2018 年のような猛暑は起こり得なかった」等としている。これは「イベントアトリビューション」と呼ばれる研究手法に基づく主張であるが、本稿ではその是非を検討した。
イベントアトリビューション研究はシミュレーションモデルに強く依存した研究である。だがシミュレーションは、過去の観測の再現が上手く出来ないなど、多くの問題を抱えている。政策検討のためには、観測データこそを重視すべきである。観測データから解ることは、猛暑の主な原因は自然変動と都市化であって、地球温暖
化の寄与はごく僅かだったことだ。豪雨についても、主な原因は自然変動であって、地球温暖化の寄与はごく僅かであった。「地球温暖化を考慮しなければ、2018 年のような猛暑は起こり得なかった」といった表現は、誤解を招くもので、エネルギー基本計画のような政策を検討する為の資料としては不適切である。




目次

要旨 ..............................................................................................................................1
1 エネルギー基本計画における記述 .........................................................................3
2 根拠となっているイベントアトリビューション研究.............................................4
3 猛暑についてのイベントアトリビューション研究の検討......................................6
1 地球温暖化は僅かしか起きていない ..................................................................6
2 猛暑の主な原因は自然変動と都市化である........................................................7
3 シミュレーションは極端気象を表現できているのか..........................................8
4 モデルのチューニングの実態を明らかにすべき...............................................10
4 豪雨についてのインベントアトリビューション研究の検討.................................11
1 モデルは現実をあまり再現できていない .........................................................12
2 仮に豪雨が強くなったとしても、温暖化の影響は僅かだった .........................14
3 観測データではクラウジウス・クラペイロン関係は確認されていない .............15
5 おわりにーシミュレーションよりも観測データを重視すべし.............................16
付 最新のイベントアトリビューション研究のプレス発表「地球温暖化が近年の日本の
豪雨に与えた影響を評価しました」について.............................................................17
1 プレスリリースの概要 .....................................................................................18
2 「1.5 倍」といっても豪雨は 7%しか強くなっていない。...............................19
3 「3.3 倍」といっても瀬戸内での豪雨が全般的に増えた訳ではない。.............20
4 観測データを示すべきだ..................................................................................22
文献 ............................................................................................................................23

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