メディア掲載 財政・社会保障制度 2020.11.06
医薬品医療機関レギュラトリーサイエンス(2020年 vol.51 No.10)に掲載
昨年末より中国武漢に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界保健機関(WHO)が世界的な大流行(パンデミック)を宣言し、世界の生活様式をすっかり変える事態となっている。米国ジョンズ・ホプキンス大学の発表によれば、2020年7月26日15時の時点で世界の患者数は1,604万8,100人、そのうち死者は64万4,537人(4%)に達している。この死者数は、世界で2003年に流行し8,096人が罹患したSARS(重症急性呼吸器症候群)の死者数774人(致死率9.6%)の800倍以上になる。一方、1世紀前に世界を襲ったパンデミック・スペイン風邪の感染者数約5億人、うち死者4,000万人(8%)に比べると60分の1の規模ではある。
しかし、COVID-19の致死率4%は、SARS9.6%やスペイン風邪8%に比べると低いとはいえ、季節性インフルエンザの致死率0.1%に比べて40倍に相当し、今後どこまで拡大するのか、第一波が沈静化したとしても第二波、第三波はくるのか、「With コロナ時代」の不安が世界を覆っている。わが国での危機感は、まず2020年2月のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの集団感染問題で高まった。
しかし、その後の国内での感染拡大は止まらず、4月7日、政府は東京都など7都道府県を対象として、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出した。更に翌週の16日には、対象を全国に拡大した。人々の接触8割制限・休業要請・外出自粛といった政府によるかつてない呼びかけが功を奏したのか、幸い新規感染者数は減少に転じ、5月14日、まず39県で宣言が解除された。更に翌週 25日、継続されていた首都圏など、全国全てで解除に至った。
しかし、更にその翌週の6月2日、東京都は感染再拡大の兆候があるとして独自の警戒情報「東京アラート」を初めて発動した。幸い10日後の6月12日に解除されたが、新規感染者の発生は都市部を中心に再び拡大傾向に転じている。特に、5月2日以来2か月を経て、東京の新規陽性者数は 7 月 2 日から 100 人を超え、9日から200人超え、23日には過去最大の366人を記録するなど、7月26日の時点で再びの感染拡大への大きな不安は現実のものとなっている。
そこで本稿では、今後の感染の再燃や第三波、第四波を見据え、先ず、メディア報道で一般に知られるようになった疫学上の指標を要約して振り返る。また、感染制御と経済活動のバランスをはかるためには、感染拡大抑止としての検査戦略が伴となるため、その科学的根拠とリスク・ベ ネフィットを考える。そして、感染封じ込めの決め手としての新たな検査戦略を提案する。