メディア掲載  エネルギー・環境  2020.11.05

超過死亡数を見ると地球温暖化は健康に良いとしか思えない

アゴラ(2020年10月30日)に掲載

エネルギー・環境

コロナの御蔭で(?)超過死亡という言葉がよく知られるようになった。データを見るとき、ついでに地球温暖化の健康影響についても考えると面白い。温暖化というと、熱中症で死亡率が増えるという話ばかりが喧伝されているが、寒さが和らげば、健康には良いのではないか?

欧州

まずは欧州のデータを見てみよう:

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1 欧州全体の死亡数の推移。データはEuromomo

横軸は時間、縦軸は欧州全体の死亡数である。2020年前半のピークでは明らかに死亡数が他の年よりも増えていた。つまり超過死亡がはっきりと存在した。コロナの影響はやはり大きかったと解る。

もう1つ注目すべきは、常に夏の方が冬よりも死亡数が少ないことだ。つまり寒さの方が、暑さよりも怖いのだ。ならば温暖化した方が、健康に良く、長生き出来そうだ。

ところで欧州の2018年は猛暑だったとされる。だが死亡数を見ると、全然他の年と区別がつかないし、普通の冬よりもよほど死亡数が少ない。

スペイン

ただし国別にみると、猛暑の影響を見て取れることもある。図2はスペインの例である。

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2 スペインにおける死亡数の推移。データはWikipediaElpais

スペインでは2018年夏の猛暑では確かに死亡数が多かったようだ。だがそれでも、毎年の冬の死亡数よりはよほど少ない。普通の冬の方が、猛暑よりもよほど怖いのだ。

けれども、猛暑で死者数が顕著に増えたとなると、地球温暖化のせいだと思った人も多かっただろう。欧州で「2050年までにCO2ゼロ」といった極端な温暖化対策が流行りだした背景には、このような事情があった。

ただし勿論、以前にこのコラムでも述べた様に、猛暑は地球温暖化のせいでは無く、自然変動と都市熱が原因である。

なおスペインでも、コロナによる超過死亡は、2020年前半にはっきり見えている。

日本

では日本はどうだろうか。

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3 日本全国の死亡者数の推移。データ:国立感染症研究所。オレンジ色の線が統計的な期待値、緑色の線は自然変動の範囲(95%信頼区間)

コロナについて日本では、幸いなことに、この図からは全く超過死亡は読み取れない。あったとしても、欧州に比べるとごく僅かだということだ。

その一方で、毎年夏には死亡数が減り、冬には死亡数が増えているのは、欧州と同じ傾向である。

猛暑だったとされる2018年夏を見ても、他の年と死亡数は変わらないし、その前後の冬よりは明らかに死亡数が少ない。

日本では寒くなると、呼吸器系疾患や循環器系疾患が増えて、死亡数も増える。これは直観的にも納得がいく。 

以上から分かったことをまとめておこう

  • コロナによる超過死亡は、欧州では大幅に増えた。それに比べると、日本では増えたとしても僅かであった。
  • 日本では猛暑の年でも死亡数は殆ど増えていない。
  • 日本でも欧州でも、冬の死亡数の方が、夏よりもかなり多い。これは猛暑でも変わらない。

このように見てくると、地球温暖化や都市熱で気温が上がると、健康に良く、寿命も延びるのではないか、と思えてくる。

なお季節別の超過死亡について、より専門的な分析は、以前にファクトシートとしてまとめたので参照されたい