メディア掲載  グローバルエコノミー  2020.09.02

中国の金融面の重点政策課題 ~“創新”を活かす改革を進められるか~

月刊資本市場2020年8月号に掲載

国際金融 中国経済 中国

はじめに

2020年、中国は2つの中・長期目標の達成状況が問われる年を迎えている。すなわち、「第13次経済・社会発展5カ年計画(20162020年)」に掲げられた中期目標と、2021年を期限とする「百年目標」に向けた様々な政策的取り組みが仕上げの段階に入ってきたということである。

135カ年計画の目標は多岐にわたり、全体で80章にも及ぶ綱要に列挙されている。2021年を期限とする「百年目標」は、1997年の第15回共産党大会で掲げられた「2つの百年目標」のうち、最初に期限が到来するもので、中国共産党建党百周年を迎える2021年までに「小康社会を全面的に建設する」という言葉でまとめられている。「小康社会」とは、「安定し、ややゆとりを実感できる社会」といったイメージで、いくつか数値目標も設定されている。

因みに、もう1つの百年目標は、当初は、建国百周年の2049年までに「現代化を概ね実現し、富強で、民主的かつ文明的な社会主義国家を建設する」と提示されたが、その後何度か表現がより力強い方向に調整されている(後述)。

2011年下期以降、中国の経済成長速度は鈍化傾向を辿ったが、上述の中・長期目標は順調に達成可能と考えられてきた。しかし、2018年頃から、米中経済摩擦が深刻さを増す一方、金融面では中小企業の資金繰り難や社債デフォルトなどの問題が影を落としている。さらに、2020年入り後は、新型コロナ・ウイルス感染症の蔓延や洪水の広がりなど、経済成長にとってネガティブな材料が積み重なっている。

こうした状況下、2003年から2010年頃にかけて大きな進展をみた中国の金融制度改革は、このところ金融リスク顕現化への対応に押され気味で、金融セクターへの市場メカニズムの更なる導入は遅れているようにみえる。ただし、中国ではこの間にフィンテック分野の目覚ましい成長がみられている。金融の“創新(イノベーション)”の芽をつぶさずに、新たな経済成長段階にふさわしい金融制度をどのように構築するか、中国の金融制度改革は大きな山場にさしかかっている。

全文を読む

中国の金融面の重点政策課題 ~“創新”を活かす改革を進められるか~