中国の財政・金融政策は、2018年下期以降、景気減速への配慮を厚くしてきたが、20年はさらにその度合いを強めている。全世界を襲った危機への対応として、当面緩和的・拡張的政策が採用されるのは自然なことであるが、デレバレッジの先送りには限界があるのではないか。経済の効率を一段と向上させるためには、過剰債務の削減とともに市場メカニズムのさらなる導入を進めることがカギとなる。
改革の推進を妨げた債務問題
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受け、世界経済が大きく減速する中、中国でも、20年第1四半期のGDP実質成長率(前年比)はマイナス6.8%となった。これは、四半期ベースでのデータ遡及が可能な1992年第1四半期以降では、初めてのマイナス成長であり、打撃の大きさを物語っている。
もともと2010年代の中国では、高度経済成長から安定的かつ持続可能な経済成長への円滑な移行を遂げるために、より深く踏み込んだ経済構造改革が必要と考えられていた。財政・金融制度に関しても、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期三中全会、13年11月)で採択された「改革の全面的な深化における若干の重大な問題に関する決定」や、「第13次5か年計画(16~20年)」に基づき、「資源配分において市場が決定的な役割を果たす」メカニズムを構築するための改革がさらに進められようとしていた。
当初、市場では、そうした政策課題への取り組みは一気に進められるものと期待されたが、実際の改革の足取りは重かった。中国では当時、過剰生産能力、過剰住宅在庫、過剰債務の問題が、次第に大きな影を落とすようになっていた。このため、16年と17年には、それら問題の解消が経済政策上の最優先課題とされ、財政・金融当局、地方政府、国有企業、金融機関などの関係者は、金融リスクへの応急措置的な対応に注力せざるを得ず、痛みを伴う改革を推進する力は弱かった。