ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2020.05.22
本稿はワーキング・ペーパーです
新型コロナの感染拡大に伴い人々の消費スタイルが大きく変化している。外食や娯楽などFace-to-face の接触を伴うサービスへの需要が激減の一方、Eコマースなどモノやサービスのオンライン消費は増えている。オンライン消費の増加はコロナ終息後も続くとの声も聞かれる。ポストコロナはコロナ前に戻るのではなく、オンライン消費を軸に新たな消費スタイルが生まれるとの見方だ。
オンライン消費には、端末の入手やネット環境の整備、ノウハウの習得など、初期コストがかかり、これが普及のネックとみられていた。しかし、コロナを契機に多くの消費者が既に初期投資を行ったということであれば、コロナが去った後も、オフライン消費に戻る理由はなく、高水準のオンライン消費が続く可能性がある。
これを検証するために、クレジットカード取引データを用いた分析を行った結果、以下のファインディングを得た。第1に、オンライン消費増加の主体は、コロナ前からオンライン消費に馴染み、オンラインとオフラインの消費を併用していた消費者である。こうした消費者が、オンライン消費の割合を高め、さらにはオフライン消費を一切やめてオンライン消費のみに切り替えるといった行動をとった。第2に、オンライン消費の経験のない消費者の一部が、コロナを機にオンライン消費を始める動きもみられた。ただし、この寄与は必ずしも大きくない。第3に、年齢別にみると、35歳前の年齢層がオンライン消費を増やし、これが大きく寄与した。一方、シニア層の寄与は皆無ではないものの小さかった。
これらのファインディングは、「オンライン消費の経験のない消費者(特にシニア層)がコロナを機に新規参入した」との見方が適切でないことを示している。オンライン消費増のかなりの部分はコロナ収束とともに剥げ落ちる可能性がある。・・・