コラム 国際交流 2020.05.18
◇ 20年1Qの実質GDP成長率は、前年比-6.8%と1992年の四半期ベース統計公表開始後、初のマイナス成長となった。輸出、投資、消費は全て2桁マイナスを記録。
◇ 1月24日の春節(旧正月)休暇開始とともに、主要省市における原則出勤停止命令により経済活動がマヒ状態に陥り、多くの地域で3月上旬までその状態が続いた。
◇ ところが、米中協議の第一段階合意の直後から、新型コロナウィルスによる肺炎の急増という極めて深刻な問題が発生し、先行きの見通しは立たなくなっている。
◇ 3月10日に習近平主席が都市封鎖中の武漢市を訪問。それが事実上の中国全土安全宣言となり、それを機に各地方が一斉に経済社会活動の本格再開に向けて動き出し、多くの企業の生産活動が再開。3月中旬以降、工場の稼働率が急速に上昇した。
◇ 日米欧経済が正常化するのは年末までかかる、あるいはそれ以上に長期化するリスクもあると見られており、外需には期待できない状況が続く見通し。内需の面では、飲食、旅行など3密回避の影響を受けやすい業種の回復が遅れる見通しである。
◇ 投資は、政府が経済回復促進のためにインフラ建設投資の拡大に注力する方針であり、その下支え効果が期待されている。しかし、先行きの内外需の不透明感が民間企業の投資意欲を低下させ、積極姿勢の回復が難しい業種も多く残る見通し。
◇ 先行きのリスク要因は、①輸出停滞長期化、②2次感染拡大、③失業の増加。失業増加要因は、中小企業の資金繰り難による倒産増大と大学新卒者の就職難問題。
◇ 1月下旬以降、日中間ではマスクや義捐金を相互に寄付し合う動きが広がった。中国人の間では今もなお、その時の日本人への感謝の気持ちは変わっていない。人的往来の抑制期間を過ぎれば、日本へのインバウンド旅行客の大幅な増加が予想される。
◇ 新型コロナウイルス感染拡大によって、世界各国で日本企業の生産活動が厳しい状況に直面している状況下、中国政府のサポートが最も迅速で、親切かつ柔軟な対応だったとの評価が増加。事業継続計画(BCP)対策として、中国で消費される製品は、現状は日本から基幹部品等を輸入して中国で製造しているが、基幹部品も含めて中国国内で現地生産化させるべきであるとの見方が増えている。
◇ 今後非接触型を重視する新しい生活様式への移行が急速に進展する中、5G等IT・AI・デジタル化分野での日中間の技術格差の実態を理解する日本企業の経営層の中には、研究開発拠点、経営戦略策定部門等の中国移転が必要であると考える者もある。