論文 財政・社会保障制度 2020.04.14
月刊『公営企業』2020年3月号に掲載
公立病院は、平成29年度時点で、全国で873病院(627事業)あり、地域における基幹的な公的医療機関として、地域医療の重要な役割を担っている。過疎地などにおける医療、救急・小児・周産期などの不採算部門に関わる医療、高度医療などを担っており、セーフティネットの役割を果たしている。
政府は、2040年を展望した医療提供体制の改革として、地域医療構想の実現等、医療・医療従事者の働き方改革の推進、実効性のある医師偏在対策の着実な推進の三位一体改革を、2025年までに実現させるべく推進中である。
令和元年9月26日に開催された厚生労働省の「第24回地域医療構想に関するワーキンググループ」で、全国の公立病院と公的病院のうち、再編統合の必要性について特に議論が必要な424病院(公立病院257病院、公的医療機関等病院167病院)について、厚生労働省が病院名を公表したことで世間を騒がせた。自治体や病院関係者等は突然の公表に動揺し、厚生労働省は翌9月27日に、「再検証をお願いするものであって、統廃合を決めるものではない」と述べた。しかし、自治体や病院関係者等の不信感や反発は強く、その後も厚生労働省は理解を求めるべく自治体や病院関係者等と会話を重ねた。総務省も令和元年10月4日より、全国知事会、全国市長会、全国町村会と会話をする「地方医療構想に関する国と地方の協議の場」を設け、令和2年2月末までに4回開催された。また、総務省は北海道や道内市町村長、道内公立病院関係に対して、令和元年11月22日に町立厚岸病院で、令和2年1月18日に木古内町国民健康保険病院で、令和2年2月22日に旭川市役所で意見交換を行った。これらをふまえて、厚生労働省は令和2年1月17日に、再編統合の再検証を正式に要請した。
医療提供体制や医師偏在など問題を抱える公立病院のあり方については、長年の検討課題である。平成19年度には、『経済財政改革の基本方針2007』で公立病院改革に取り組むことが明記され、総務省は『公立病院改革ガイドライン』を示し、自治体は公立病院改革プランを策定した。そして、平成27年度には、『経済財政運営と改革の基本方針2014』で地域医療構想の策定に合わせ、『新公立病院改革ガイドライン』を策定することとなり、自治体は新公立病院改革プランを策定した。
公立病院の経営は以前から厳しく、自治体の財政において長年の大きな課題になっている。セーフティネットとしての役割、民間病院が行いたがらない不採算部門の医療を提供するということは赤字を招きやすいということである。不良債務を抱える公立病院は多く、昭和49年度から「病院経営健全化措置」が行われてきた。平成20年度からは、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(平成19年法法律第94号。以下、財政健全化法と略す)」が施行され、公立病院を含む公営企業に対しても資金不足比率を指標とすることになった。
筆者は、本誌2018年3月号「財政健全化法施行初期の公営企業と財政措置」を上梓し、北海道美唄市の市立美唄病院の実態を述べた。美唄市は平成27年度に経営健全化計画の完了報告を行った。本稿では、平成26年度に資金不足比率が経営健全化基準以上となった兵庫県川西市について検討する。川西市は平成30年度に経営健全化計画の完了報告を行い、平成31年4月から指定管理者制度を実行している。
第1章では、公立病院を取り巻く状況を概観する。第2章では、兵庫県川西市の経営健全化の取り組みについて検討する。・・・