コラム  国際交流  2020.04.01

新型コロナウイルス、大統領選挙と米中関係の展望 <2020年2月27日~3月14日 欧州米国出張報告>

◇ 米国民主党大統領候補を選出する民主党予備選挙が2月初めからスタートし、2月下旬時点ではサンダース候補が最有力との見方が広がり、バイデン候補の逆転は難しいのではないかとの見方が多かった。しかし、バイデン候補は2月末のサウスカロライナ州の予備選で初勝利を収めると、3月3日のスーパー・チューズデイでサンダース候補を逆転して首位に立ち、その後も優勢を続けている。3月中旬時点では、サンダース候補がバイデン候補を逆転する可能性は極めて低いとの見方が広がっていた。


◇ トランプ大統領の支持率は、大統領就任後、概ね40%前後で推移した一方、不支持率は50%を上回り続けている。大統領選挙に際して、経済状態が良好な場合には、戦後の大統領選では常に現職大統領が勝利してきた。しかし、現職大統領の不支持率が50%を上回り続けた状況で大統領選挙に勝利した事例はない。


◇ 新型コロナウイルスにより米国経済が大きな打撃を受け、大統領選挙までに回復が間に合わなくなる場合は、経済状態が良好であるという前提条件が崩れることになる。今後の新型コロナウイルス感染状況と経済的なダメージの大きさ、それに対するトランプ政権の経済対策の効果、世界経済動向などによって米国政治経済社会は大きく左右されることから、大統領選の先行きは依然として極めて不透明である。


◇ バイデン政権が誕生した場合でも、米国の対中政策は現在のトランプ政権の対中強硬姿勢が継続されるとの見方が支配的である。企業や大学における中国人技術者の採用抑制、中国側が出資する資金の利用制限、中国への技術流出リスクの管理強化など中国排除の基本的な政策方針が大きく変化することは考えにくいと見られている。ただし、対中交渉方式は米中間の継続的な協議の復活、日本、EU、英国など同盟国、友好国との政策連携の重視など、モデレートな姿勢に変化するとの見方が多い。


◇ 2020年中、中国の2000億ドル購入実現は難しくなった。しかしこれは突然の新型コロナウイルス感染拡大が生じたことが原因であるため、米国政府としてもその点は考慮し、2020年に関しては完全達成を求めない方針との見方が大勢。


◇ 最近発表されたアンケート調査の結果を見ると、米国人の対中感情が昨年、急速かつ大幅に悪化した。実際、オバマ政権時代に比べても大幅に悪化している。


◇ 新型コロナウイルス感染に苦しむ中国に対して、日本の各層の人々が自発的に思いやりあふれるメッセージとともに様々な支援物資や義援金を中国に届けた。日本人の反中感情の強さが知られていることもあって、米国有識者はこの事実にかなり驚くとともに高く評価した。ブルッキングス研究所のレポートでもこのことが紹介された。


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新型コロナウイルス、大統領選挙と米中関係の展望 <2020年2月27日~3月14日 欧州米国出張報告>