コラム  国際交流  2020.02.17

中国経済は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で先行き不透明 ~感染拡大の影響はSARS時に比べてはるかに大きくなる見通し~ <北京・上海出張報告(2020年1月12日~23日)>

◇ 19年4Qの実質GDP成長率は、前年比+6.0%と前期と同じ伸び率だった。19年通年では同+6.1%と前年に比べて0.6%ポイントの低下となり、習近平政権発足以降、ずっと緩やかな低下傾向が続いてきた中にあっては、やや大幅の低下となった。


◇ 経済の先行きの見通しについては、米中協議の第一段階合意が主因となって、昨年を通じて最大の不確定要素だった米中貿易摩擦問題が当面は比較的落ち着いた展開となることが期待されるようになった。このため、本年初は昨年初のような経済減速に対する強い懸念もなく、ある程度安心して新年を迎えることができていた。


◇ ところが、米中協議の第一段階合意の直後から、新型コロナウィルスによる肺炎の急増という極めて深刻な問題が発生し、先行きの見通しは立たなくなっている。


◇ 2003年SARS流行当時の中国経済の成長を牽引していたのは固定資産投資であり、しかも主要産業集積地において工業生産への影響があまり大きくなかったため、投資は高い伸びを保持した。これに対して、現在は消費主導型の成長パターンへと移行しているため、経済成長に与えるインパクトはSARS当時に比べてはるかに大きい。


◇ 19年の中国経済が世界経済全体(GDP合計)に占めるウェイトは16.3%とSARSが流行した2003年当時(同4.3%)の約4倍に達している。新型コロナウィルスの感染拡大が及ぼす影響は、SARSに比べて世界経済にも大きな影響を与える。


◇ 19年は米中摩擦が深刻化したが、その状況下でも、中国からアセアン諸国等へ生産拠点を移す日本企業はごく一部に限られている。今後中国での事業展開を縮小する、あるいは第3国に移転すると回答した企業は、むしろ減少している。この結果から見て、米中摩擦の深刻化が日本企業の中国ビジネスに与える影響は軽微である。


◇ 中国に進出している欧米企業を見ると、先行きの投資拡大を計画している企業の割合はいずれも日本企業より高く、中国ビジネスに対する積極性を維持している。


◇ 米国企業のファーウェイとの取引も依然として活発に続いている模様。米国政府からの要請により、一部の米国企業はファーウェイとの取引を停止あるいは縮小したが、多くの企業は取引を継続している。そのために米国の生産拠点をドイツ、マレーシア等米国外に移転して規制に対応している企業も少なくない。



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中国経済は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で先行き不透明 ~感染拡大の影響はSARS時に比べてはるかに大きくなる見通し~ <北京・上海出張報告(2020年1月12日~23日)>